私立秀麗華美学園
*
ある暑い夏の日。数日前に自らの姫と共に寮へ戻った鳥居雄吾朗は、自分しかいない部屋で休暇中の課題をこなしていた。
相部屋の男は、まだ数日間は戻って来ない。
そのことを思うと自由を感じると共に――もっとも、相手がいたところで今更気兼ねなどをするわけでもないのだが――僅かな寂しさを感じないでもなかった。
話し相手がいないというのはつまらないものだ。
もちろん咲がいるが、さすがに四六時中一緒にいるというわけにはいかない。
何も言わなくても1人で口を開き続けるあの友人は今頃、姫が恋しくて泣いているだろうか、などと不遠慮なことを考えつつ、プリントをぱらりと捲る。
その日、咲は学園に残っていた女友達と、街へ出かけると言っていた。
時計を見ると、昨日の夜に、乗る予定なのだと言っていた列車の時間を、少し過ぎたところだった。
今頃は列車の中ではしゃいでいることだろう。
雄吾は眼鏡を外し、伸びをした。椅子の背を大きく傾け、そのままの姿勢で天井を見上げる。
「……暇だ」
自主的に取り組み始めたその課題も、もうあと数ページを残すところだ。
しばらく考えていた様子だったが、あくびをひとつすると立ち上がった。椅子を机に戻し、ベッドに倒れ込む。シーツはあとで伸ばそう、と思った。
「……暇だな」
再び呟く。
仰向けになって夏布団を引き寄せると、あくびが漏れた。今朝は咲を内線で起こすために早起きしたので眠気が残っている。
たまにはいいか、と思った。
例の友人にならい、たまには怠惰な休日を過ごすことも良しとしよう、と雄吾は思い、眠りに落ちた。
ある暑い夏の日。数日前に自らの姫と共に寮へ戻った鳥居雄吾朗は、自分しかいない部屋で休暇中の課題をこなしていた。
相部屋の男は、まだ数日間は戻って来ない。
そのことを思うと自由を感じると共に――もっとも、相手がいたところで今更気兼ねなどをするわけでもないのだが――僅かな寂しさを感じないでもなかった。
話し相手がいないというのはつまらないものだ。
もちろん咲がいるが、さすがに四六時中一緒にいるというわけにはいかない。
何も言わなくても1人で口を開き続けるあの友人は今頃、姫が恋しくて泣いているだろうか、などと不遠慮なことを考えつつ、プリントをぱらりと捲る。
その日、咲は学園に残っていた女友達と、街へ出かけると言っていた。
時計を見ると、昨日の夜に、乗る予定なのだと言っていた列車の時間を、少し過ぎたところだった。
今頃は列車の中ではしゃいでいることだろう。
雄吾は眼鏡を外し、伸びをした。椅子の背を大きく傾け、そのままの姿勢で天井を見上げる。
「……暇だ」
自主的に取り組み始めたその課題も、もうあと数ページを残すところだ。
しばらく考えていた様子だったが、あくびをひとつすると立ち上がった。椅子を机に戻し、ベッドに倒れ込む。シーツはあとで伸ばそう、と思った。
「……暇だな」
再び呟く。
仰向けになって夏布団を引き寄せると、あくびが漏れた。今朝は咲を内線で起こすために早起きしたので眠気が残っている。
たまにはいいか、と思った。
例の友人にならい、たまには怠惰な休日を過ごすことも良しとしよう、と雄吾は思い、眠りに落ちた。