私立秀麗華美学園
2章:同じ境遇に生きて



「起きろ。和人」


かぶり込んだ布団の上からぶっきらぼうな声が降って来る。


「あと5分……」

「ゆうかたち、待たせるのか」


布団を思い切り跳ね除け、飛び起きた。


今日は日曜日で、久々に4人で街へ出かけることにしている。
誘った俺がゆうかを待たせたりなんてしたら、どうなることかわからない。


時計を見ると、まだ6時だった。


「まだ、6時……」

「早起きして損はない」


見透かしたように雄吾は言って、ドアの方へ向かった。
にしたって約束の3時間前にひとを無理やり起こすとはどういうことなのか。


「外出許可証、取って来る」


眠たい目をこすって雄吾を見ると、既に身だしなみを整えていた。
食卓には朝ごはん。
あいつ、何時に起きてやがんだ。


とはいえいつも俺の分まで食事を作ってくれる雄吾には感謝している。
食堂へ行けば済む話なのだが、自分の体を作る食べ物はなるべく自分で選ぶというのが雄吾のポリシーなのだ。

それにどれだけ早かろうとも、例え約束の5時間前であろうと(経験あり)雄吾が起こしてくれなければ俺は確実に遅刻していただろう。




大あくびをして、着替える。

食卓には白米と納豆と魚の干物と味噌汁がのっていた。
おまけに小皿の上に焼き海苔。ギャグかってぐらい忠実な日本の朝ごはん。
いかにも雄吾らしいメニューだ。


毎日のことながら、家のシェフにも劣らぬ腕前。
どこでこんなスキルを身につけたのだろう。あいつに花婿修行は必要ない。

つい雄吾のエプロン姿を想像して、口から米を吹き出してしまった。


……1人食卓でひとの作った飯を吹き出しているとは、我ながら危ない人間だ。
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