私立秀麗華美学園
「そうやって、気づいた時には特別になってて。

でも彼女、決まった相手のいる人だったんだ。そいつのこと憎かった。恨めしかった。
そいつとは同じクラスだったこともあったけど、あんまり関わったことはなかったから、どんなやつかも知らなかったけどな。

1年前ぐらいに、本当に偶然、彼女を事故から救ったんだ。
俺、自分でも認めるぐらい策士だけど、あれは本当に偶然だった。
偶然っていうか、彼女のことばっかり見てたから助けられたんだけどな。


それからしばらく、深く関わるようになって。

彼女はすごく優しかったし、愛想もよくて、しかも彼女の婚約者のことも知るようになったけど、なんか、なんつーか、とるにたらないやつなんだよそいつ。

成績は良くないし部活も不真面目だし、正直なんでこんなやつがって思ってた。

実際彼女もそいつのこと、好きで一緒にいるわけじゃなかったみたいだし。


なんか、希望あるかもなって、思ってたんだけどなあ……」


彫刻の陰で身を潜め2人の会話に耳を傾ける雄吾は、趣味の良くないことだとはわかっていつつも、話を聞かずにはいられなかった。

実際、動けば見つかってしまうのだ。どちらにせよこの場を離れられないのだから、友達にとって大事なものになりそうな話に聞き耳を立ててしまったって、罪にはならないだろう、と割り切ることにした。


「そう思ってたら、今年、同じクラスになったんだ。
彼女と、その婚約者も一緒なわけだけど。

本当に嬉しくて、婚約者の男には最初っからライバル心むき出しでつっかかってった。
向こうからしてみればなんだこいつって感じだっただろうな。

2人の関係もあんまり変わってないみたいで、本当に頑張ろうかと思っちゃってたんだ。


だけど、だけど最近になって。
見る機会が増えたせいもあるのか、わかってきちまったんだ。


愛想のいい方は、本当の彼女じゃないんだ、って……」
< 254 / 603 >

この作品をシェア

pagetop