私立秀麗華美学園
親は違えども羽美は正真正銘雄吾の妹だ。
ということは、このままいけば咲にとっては義理の妹ということになる。

そんな相手の何やらよくわからないが手ごわそうな態度に、咲は吹っ切れたらしい。
小難しいことを考えるのは止めて、本格的に「突撃」を始めた。


「うーみーちゃん!」


昼食のあと部屋へ戻ろうとした羽美を、懲りずに呼び止める。


「これからみんなで、美子さんがやってる家庭菜園行って、収穫しようって言ってんねんけど、行く?」

「いい」


即答して逃げるようにドアを開ける羽美に、咲はふくれっ面をする。


「もー!」


しかしめげた様子は微塵も見られない。

菜園に行って、トマトときゅうりを収穫して、抱えたまま今度は部屋にまで突撃する。


「羽美ちゃーん! 見て見て! こんなでっかく育ってたよ! 何やと思う? これ」

「野菜」


ゴーヤほどのサイズにまで育った採れたてのきゅうりを掲げて言っても撃沈。


「何してたー? なんで部屋こもってんのー?」

「勉強」


再びリビングで勉強し始めたものの、飽きたのでお菓子を持って羽美の様子を見に来たが、視線もくれない。


「遊ぼー!」


夕食後椅子から下りた羽美にすかさず声をかけるも、両耳に手をあてながら「あーーー」と言って早足で逃げられる。


「うーん。何かわからんけど、めっちゃ手強い……。和人にきれたゆうかの機嫌取るぐらい難しいな……」


腕組みをすると珍しくため息をついて、ドアの向こうに消えた小さな背中を見送った。
< 277 / 603 >

この作品をシェア

pagetop