私立秀麗華美学園
「羽美、どうしたんだ? 帰ってきてから、俺ともあまり話をしたがらないようだし。

せっかく久しぶりに咲と共に実家へ帰って来たんだ。
俺は咲と羽美には仲良くして欲しいと思っている。

何か、抱えているものがあるなら、言って欲しいんだ」


真っ赤になった羽美の顔を雄吾が覗き込むと、小さく小さく、口が開けられた。


「わ、わたし、わたし……」


ぱっと顔を上げて涙のたまった瞳で雄吾を見返す。


「お兄様なんか、嫌い!」


叫ぶなりぱっと身を翻し、ドアを開けて走り去ってしまった。


「羽美!」


雄吾が立ちあがって叫び、驚いた表情で咲も隣に並ぶ。


「咲、悪かった。羽美には、ちゃんと話を……」

「待って!」


羽美を追って駆け出そうとする雄吾の腕をつかみ、咲は必死に言った。


「あたしに行かせて! 今雄吾が行っても、きっと羽美ちゃん何も言ってくれへん」

「……どうしてそう思う?」


真剣な表情で問う雄吾に、咲は即答する。


「女の勘!」


雄吾は不意を突かれた表情になり、一度開け放たれたドアの向こうを見やったあとで、「わかった」と呟いた。


「頼んだ、咲」

「任しといて!」


咲は羽美が走って行った方に飛び出して行った。
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