私立秀麗華美学園
「あたしらの名前。全部、繋がってんねんで」

「しりとりだ……知らなかった」


驚きに満ちた、きらきらした顔の羽美を見て咲ももう一度笑顔になる。


「麻由が生まれた時にな、「咲」と「恭真」が繋がることに気づいて、どうせなら雄吾ともひっつけちゃおうってことで、名付けてんて。
風來と鳥居の繋がりを表した名前として。

ほんで羽美ちゃんの時も、同じように、「雄吾朗」に繋がる名前で……やねんけど、こっちは、兄プラス将来の姉とも繋がる、兄弟の繋がりを表した名前として、ってことらしいで。
美子さんとも一文字共有できてるし。

やからさ、羽美ちゃん。
今までそんなこと思てたんやったら、それは大間違いやねんで」


違う涙が羽美の瞳を満たしていく。

自分の名前に込められた意味や願い。
自分を生まなかった母からもらった同じ一文字。
望んだ繋がりを、生まれた時から持つことができていたのだと初めて気づく。

嬉しくて泣いたのは初めてのことだった。


「……ううー……」

「な、やからさあ羽美ちゃん。あたしは羽美ちゃんの大好きな雄吾と、離れる気はないし、言ってた通り美子さんたちの子供にまでなりたいなって思ってるよ。

やけど、っていうかやからこそ、羽美ちゃんと仲良くしたい。
だってあたしら、羽美ちゃんが名前もらった時から、兄弟みたいなもんやんか」


ぽんぽんと頭を撫でる。
丸まって泣く羽美は、まだとても小さくて幼かった。


「ごめんなさあい」

「口もききたくないほど、腹立てとった?」

「ううん、羨ましかっだけ」


ぐずぐずと泣きみつつある羽美の顔を覗き込んで咲は言った。


「じゃ、雄吾のとこにも行こ。羽美ちゃんに「嫌い!」なんて言われたから、きっと落ち込んでるで」


2人は、ほんものの兄弟のように、手をつないでリビングに向かった。

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