私立秀麗華美学園
ヨハンはとてもフレンドリーで人懐こく、接しやすい人柄のようだった。
わかりやすい例を上げると、チキンな俺でも普通に会話ができたぐらいだ。

挨拶では堅苦しい日本語を使っていたが口語は口語でちゃんと使い分けもできるらしい。


そんな風だったので彼は数日でクラスに馴染んでいた。

その数日間で、とりあえず、ヨハンについて恐らくクラスの全員が把握した事柄がひとつ。


「ヨハン、おはよう」

「おはようヒナ。今日もキレイだね」

「おはようございます、ヨハン」

「ユリコ、ヘアスタイルを変えた? すごく似合ってる」

「ねえヨハン、お昼、ご一緒しない?」

「いいよ。ミナミとなら大歓迎だ」


まー、なんちゅーか、清々しいほどのプレイボーイっぷりだった。

そして女というものは褒められておちる生き物だそうなので(ユリコ、もとい百合子さん談)ヨハンの気をひこうとする女子は日に日に増えていった。

この学園に入ってくるぐらいだから、彼のパルミーノ家というのもそれ相応のものであろう、という推測をふまえた上でのアピール合戦なのでは、という見解もある。


「そりゃねー。外国人なんて、みんなかっこよく見えるだろうしね」


ゆうかと寮へ帰る道すがら、ヨハンのことが話題に出た。


「ゆうかも?」

「わたしはヨーロッパ顔、見分けつくもの。父方のお祖母さん一家がそうなんだから」


言った瞬間なんで聞いたんだ俺って後悔しただけに、とりあえず肯定されなかったことにほっとする。


「そっか」

「なんか『女性が大好きです』とか言ってたらしいわね」

「きゃあきゃあ騒いでらっしゃったけどな。百合子さん中心に。顔がよければ何言っても許されるっていう」

「いや、でもそれ、雄吾が言ったら嫌でしょ」

「……それは絶対に嫌だ」

「やっぱりなんとなく、外国人だから許されるみたいなとこあるじゃない。ヨハンならいかにもって感じするし。日本人でそんなこと言える人稀でしょ」

「そりゃそーか」


ゆうかにとっても俺にとっても、ヨハンは単なるにわかクラスメイトで終わるはずだった。

はずだった。

はずだった、んだけど。
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