私立秀麗華美学園
2学期が始まってから、つまり、ヨハンがA組の一員となってから、半月ほどが経った頃だった。

事件は英語のライティングの時間に起こった。


ライティングとはその名の通り英語を書きまくりましょーという授業なわけで、1学期にも文学作品をを英作したりディベートを英語でやったりと様々なめんどくさ……じゃなくて有用な取り組みをやってきた。

何やら今学期は長期的な取り組みを始めるらしい。


「今回は、英語を使った発表を行ってもらおうと思います」


英語W(ライティング)の授業の担当教師、つまりA組の担任榎木先生はそう言って、教室に備え付けのスクリーンに映像を映した。


どうやら昨年の2年生が行った同じ授業の模様を撮影したものらしい。

生徒2人が黒板の前で模造紙を広げて説明をしている。アジアの地理について調べたようだ。
これで書かれているのが簡単な地図と日本語であれば小学生レベルだが、模造紙の地図は参考図程度で、メインは調べたことを、何も見ず口頭で英語を使って説明しているところにある。


発表って、ほぼスピーチ大会じゃねえかこれ。この長さの英文完全暗記かよ。


「このような発表が行えるまでには、もちろんそれ相応の準備時間を必要とします。

今後の授業では平常の教科書に沿った授業に並行し、準備のための時間をとっていくつもりです」


うぅ、めんどくさい。
俺は英語が苦手だ。じゃあ何が得意なんですかという質問にはもちろんノーコメントだ。

だから今回の取り組みも、英語Wの時間が来るのを憂鬱に思いつつ、ゆうかとかに手伝ってもらいつつ、てきとーにやり過ごしていくもんだと思っていたのだが。


「発表は2人組で行ってもらいますので、今日は取り急ぎペアを決めてしまいましょう。

くじでも構いませんが、ご自分たちで決めていただいて、決まりそうならばそれでいいでしょう。
割合長い取り組みになるかと思いますので、気心の知れた方同士の方がやりやすいかとも思います。

しばらく待ちますので、決まったペアから黒板に書いていってくださいね」


榎木先生の言葉によって、教室はざわざわと徐々に騒がしくなっていった。
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