私立秀麗華美学園
ペア活動というとPAK制度によるパートナーがいる人は真っ先にペアを組みそうなものだが、必ずしもそうとは限らない。

全てのペアが真二たちや雄吾たちのように仲睦まじいわけではないし、仲がどうとかいうより恥ずかしがってあまりパートナーと行動を共にしない人もいる。


俺はってゆーと、そりゃ、ゆうかと組みたいのはもちろんだ。

だがしかし授業内活動で、この学力差をもってしてそんなお願いができるほどの厚かましさは持ち合わせていないわけで。

さてどうするか、と、そこそこ付き合いのあるフリーの友達(もちろん馬渕のところへすっ飛んで行った巻き毛はアウトオブ眼中)を探そうとした時だった。


「ヨハンはどうなさるのですか?」


ここ最近異様な積極性を見せていた女子たちが、ヨハンに群がっていた。
誇張ではなくリアルに「群がる」と言って正しいほどの人数だ。


「英語はお得意?」

「いや、残念ながらあまり。留学先は日本しか考えていなかったからね。母国でも英語はそれほど使われていないんだ」

「あらそうなの? じゃああたしと組みましょうよ。英語は得意教科よ」

「私もですわよ。是非外国の方と活動がしてみたいわ」

「ヨハン、あたしもよ」

「あたしも英語は得意よ」


突如英語を得意とする女子が大量発生したA組は、またたくまに戦場と化し、もはや教室中がヨハンたちに注目していた。


「大変な人気ですわね。それでヨハン、あなたはどうするつもりなの?」


おかしそうに笑って椅子に腰かけた榎木先生が尋ねると、ヨハンは笑顔で言った。


「はい。みんなには申し訳ないけれど、僕はもう、決めているんだ」


衝撃発言に喧騒が一層大きくなる。「一体誰なの!?」とヒステリックな叫びが飛び交う中、ヨハンは、自分を囲む女子群の外に視線を向けて言った。


「今回の活動、僕は是非ユウカとペアを組みたいな」

「……え?」


突然名前を呼ばれ、驚いた顔でヨハンを見るゆうか。


「わたし?」

「うん。いいかな」


……ちょおおおおっと待てええええい!


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