私立秀麗華美学園
待て。待つんだ。うぇいとあみにっつ。とりあえず、落ち着け俺。


「え、だって、どうして?」

「ユウカは親戚にヨーロッパ人がいるんだよね? だからいろいろと、話をしてみたかったんだ。
それにユウカはとっても英語が得意だと聞いて」


にっこりとほほ笑んでユウカに近づいたヨハンに、女子たちは呆気に取られた表情をする。


「それとも既に、誰かとペアに?」

「いいえ」

「僕とじゃ嫌?」

「そんなことは」


と言いつつ迷ったような表情のゆうかと、返事をしない限りユウカから視線を外そうともしないヨハン。

そんな2人を見て、あろうことか榎木先生は、


「そうね、そうするといいわ。
花嶺さんの言語学系統の成績は申し分ないものね。

日常会話に差し支えはないと言っても、発表ともなれば必要な言葉は違ってくるでしょうし。

ヨハンが望むのならなおさらよ」


いやいやいやいやなんでそうなる。大体言語学系統って……ああ、日本語変換能力も優秀だろうからってことか。確かにゆうかは文系教科の成績が特に……って納得してる場合じゃねえだろ俺!


「ちょ……」

「先生もそう言ってくださっていることだし。どうかな?」

「……それじゃあ」


ゆうかは一度俯いてから、ヨハンの顔を見上げた。


「よろしく。先生のご期待にまでそえるかどうかはわからないけれど」

「よかった。ありがとう」


ゆうかが答えると、榎木先生は自ら黒板に「パルミーノ、花嶺」と書き記した。


え、俺、ちょ、しか言ってねーよ。っつーかそもそもこういう場で俺が口挟めるかっての。

まったくなんでまたこんなことに……。まあゆうかは大してヨハンのこと気にしてるわけでもなさそうだったし、語学に関してクラス1の成績であることは確かだし、まあ、しゃあねえか……。

と、深く考えていなかった俺がバカだった。


「よろしくね、ユウカ」


少し腰をかがめて笑顔のヨハンがゆうかを覗き込んだと思ったら、次の瞬間やつは、ゆうかの右頬に。


く ち づ け た。
< 293 / 603 >

この作品をシェア

pagetop