私立秀麗華美学園
どこかでホトトギスかなんかそれ系の鳥が鳴いていて、辺りでは遅咲きの桜が最期の力を振り絞って乱舞している。
高校2年の春の、ある日のこと。
「ゆうか!」
俺は手を振り上げ、愛しの姫の名を呼んだ。
明るい色の髪がふわりと揺れ、桜色の空気の中で姫は振り返る。
ゆっくりと、その愛らしい唇が動かされた。
「和人、おっそい。いつになったら定刻に来られるのよ」
「姫」は険しい目つきでそう言った。
肩で大きく息をしながら待ち合わせの印である時計に目をやると、針は9時を差していた。
「ええええ!?」
「馬鹿じゃないの。壊れてるのよその時計。今は8時丁度」
……え、定刻じゃん。
思わず出かけた言葉をのみこむ。ゆうかはいつでも5分前行動の精神で行動しているのだ。
軽蔑のこもった声で馬鹿と言われようとも、そのたびに落ち込んでいては身が持たないので、俺は息を整えることに専念した。
が、顔を上げると、ゆうかは既に歩き出していた。
高校2年の春の、ある日のこと。
「ゆうか!」
俺は手を振り上げ、愛しの姫の名を呼んだ。
明るい色の髪がふわりと揺れ、桜色の空気の中で姫は振り返る。
ゆっくりと、その愛らしい唇が動かされた。
「和人、おっそい。いつになったら定刻に来られるのよ」
「姫」は険しい目つきでそう言った。
肩で大きく息をしながら待ち合わせの印である時計に目をやると、針は9時を差していた。
「ええええ!?」
「馬鹿じゃないの。壊れてるのよその時計。今は8時丁度」
……え、定刻じゃん。
思わず出かけた言葉をのみこむ。ゆうかはいつでも5分前行動の精神で行動しているのだ。
軽蔑のこもった声で馬鹿と言われようとも、そのたびに落ち込んでいては身が持たないので、俺は息を整えることに専念した。
が、顔を上げると、ゆうかは既に歩き出していた。