私立秀麗華美学園
遅れをとった俺だが、自慢の短距離なものでたったかたーと追いついた。


「ちょ、ひでーよ……」

「しっ! 黙って!」


着くなりゆうかは口の前に指を立てて俺を黙らせた。
置いて行って、それはないっすよ。


堂本を追って辿り着いたのは、閑静な住宅街だった。
2人は言葉を交わしながら、寄り添って歩いている。

俺たちはというと、電柱の陰から堂本たちを覗いていた。
ストーカーの見本のような状態である。


しばらく黙ってじりじりと跡をつける。
幸い堂本は微塵も気づいていない様子。
あいつどっかおかしいんじゃねえの。


「あ! 入って行った!」


堂本(と、ひっついた女)は、平凡な一軒の家の門を開けて中に入っていった。


「彼女を家まで送り届けたって感じやな」

「そうね。不釣合いな気はするけれど、別に彼女が一般人だっておかしくないわよね」


一般人という表現はどうかと思うが……。
まあ、庶民などとは言わないところがゆうかのいいところだ。


その時、一番目のいい俺は、その家の表札を見て驚いた。


「こっこっこ、どっどっもっ……」

「こっこっこー? どーも? 何? にわとりになって挨拶する夢でも見たん?」


咲は顔をしかめた。さすがは関西出身。つっこみがうまい。とかじゃなくて。
まさか今この場面で、にわとりの真似をし出すほど俺は馬鹿ではないつもりだ。


「ここ、堂本ん家だ……」

「はああ!?」


咲は大声を上げ、ゆうかは口を少しだけ開き、雄吾は無表情のまま、俺が指す表札の方を見た。
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