私立秀麗華美学園
一度は承諾したことではあるし、俺は大人しく協力することにした。
この間からぽつぽつ気になる発言をする笠井に逆らう気にならなかった、というのもある。


「いーい? あっちの方でたぶん、ヨハンとゆうかがごはん食べてるから、和人とカルラも、2人の目の前でお弁当広げる。なるべく仲良さそうにしてな!

ヨハンに妬かせたら勝ちやで。向こうがなんか反応してきたら、カルラはそのままヨハンと話してもいいし!」


気遣っていた割には有無を言わさぬ口調で咲がてきぱき説明する。

好きなんだろうなあ、こういう、作戦立てたりするの。ことに恋愛が絡んで来ると。
花鳥風月結成の支柱が見えた気がした。


「がんばるわ! カズト、よろしくね!」

「へい」


適当に返事をすると笠井に無言で背中を叩かれた。なぜかそれにのった咲からも一発。
了解いたしました、と言い直し、カルラと中庭へ向かった。


「カズト、ムリヤリ、ごめんね」

「いや、いいよ。カルラが悪いんじゃないし」


そこの物陰に咲と隠れている猫かぶりのリサーチによると、ヨハンは今日中庭のベンチでゆうかと昼食を摂る予定らしい。

ピロティを抜けて中庭に出る。カルラと話しながらベンチの方にこっそり視線をやると、いたいた。一番左のベンチに、2人並んで腰かけている。


「いるね」

「ああ。どこ座ろうか」

「フンスイのところにしましょう。あそこからなら、お互い見えるわ」


カルラに合わせて歩く。ベンチと近過ぎるような気もしたが、気づかれてなんぼだからな、と思い腰を下ろす。

ヨハンたちからはこっちの横顔が見えているはずという状態。向こうから見ると、手前にカルラ奥に俺だ。直角ではないから、俺の顔も見えるだろう。


……しかし、ただでさえ嘘ついたことでおかしな空気になっているところへ、何やってんのかね俺は。

承諾したからって断れないわけじゃない。
絶対ねえよと言いはしたものの。
なんの期待もしていないと言えば嘘になる。


結局俺も、ゆうかの反応を確かめたいとどこかで思っているようだ。

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