私立秀麗華美学園

「人の多いところほど必要以上に親しく見せてみたり、わたしと噂になったらいいと思ったんでしょ？　彼女に嫉妬して欲しくて」

「……そうなの？　ヨハン」


そっとカルラが尋ねる。ヨハンは困った顔をしてゆうかを見て、俺の方も見た。視線を泳がせ、頬をかいて、渋々といった様子でうなずく。


「なによ！　またそんなやり方して！」

「カルラだってそうだったじゃないか！」

「そうよ！　だってわたし、ヨハンに嫉妬して欲しかったんだもの！」


不意をつかれたようにヨハンが言葉を詰まらせる。


「いつもいつもヨハンばかりずるいわ。わたしは、早く、仲直りがしたいと思って……」


口論で紅潮したカルラの頬にヨハンが手を添え、反対側の頬にキスをする。


「……カルラ、ごめんね」


カルラは拗ねた顔でヨハンを見上げた。


「もう二度としないよ。許してくれる？」

「……わかってくれたなら、いいの。許してあげるわ」


息の詰まる思いで一連の流れを見ていた俺はほっとため息をつく。

やれやれだ。よくある形のハッピーエンドだ。口論の激しさには焦ったが、俺もそれなりの役目を果たせたようでよかった。


近づけていた顔をカルラから離すと、ヨハンはバツの悪そうな表情でゆうかを見た。


「ユウカ、気づいていたんだね」

「ええ」

「ごめんね。悪気はなかったんだ。ユウカと話してみたいと思っていたのも本当だよ」

「いいのよ。わたしも話せてよかった。ライティングのスピーチ、頑張りましょうね」

「ユウカさん、カズトは、わたしが頼んで、協力してくれたの」

「うん。わかってるよ」


ゆうかはカルラに穏やかな笑顔を向ける。
ゆうかが咲や俺以外の人に八つ当たりなどしないことはわかっているだけに、あの笑顔の下にどんな感情を秘めているのかと思うと……。


「昼ごはん、２人で食べるといいわ。わたしはやらなきゃいけないことがあるから」


しきりにアリガトウと言うヨハンとカルラが遠ざかると、ゆうかは、無表情で俺に近づいてきた。