私立秀麗華美学園
「なんて、僕が言ってもいいかどうかわからないけど」


すとんと近くのいすに座ったヨハンに笠井があからさまに嫌な顔をする。


「ことごとく邪魔してくれてんじゃねえよてめえ! そうだ。てめーに首突っ込まれる筋合いはねえんだよ!」

「素出てんぞお前……」

「猫かぶる価値ねえよどうせ今日で限りだし」


けっ、と横を向く笠井。どうも最近のこいつは驚くべきガキっぽさであるようだ。


「俺は別にヨハンのせいだとか思ってねーよ。なるべくしてこうなったんだよ」


嘘じゃない。今回原因は俺にある。
きっかけが何であったにしろ俺がゆうかを避けたことに変わりはない。


「だからヨハンは心配せずに帰国しろよ。カルラと仲良くな」

「だああもうてめぇは! それが心配すんなってツラかよってんだ! んなこと言うのはてめぇが自分の行動の理由ぐれえ把握できるようになってからにしろよ!」

「るせーな」

「カズトとシンは仲良しだね」

「「はあああ!?」」

「シンはカズトとしか、そんな砕けた口調で会話をしないよね」

「砕けた口調か、ものは言いようだなケンカ売ってんのかてめえ」

「砕けた口調っつーよりふざけた口調だよな」

「ぼそっと何言ってんだてめえも!」


ははははは、とヨハンが楽しそうに笑う。


「明日で、帰っちゃうんだなあ」

「うん。とても楽しかったよ。カズトには世話になった。この度のお力添え、一生恩に着るよ」

「いや大袈裟だろ」

「改まるとすげえ日本語使うよな。最初の時もびっくりしたし」

「そうかな?」


その時教室のドアが開いてゆうかが入ってきた。
俺たちの方に近づいてきたのでふと目が合ったが、自然にそらされる。


「ヨハン」

「あ、ユウカ」

「わたしたち、スピーチ優勝したから、先生が何かくれるんだって。行こ」


用件だけを伝えるとくるりときびすを返し、離れて行った。

ヨハンは苦笑いをして席を立つ。


「……何、考えてんだろうなあ」


笠井が呟いて、俺も苦笑いになった。







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