私立秀麗華美学園
「すみません!」


声のした方を向くと、堂本の頭が地面につきそうなほど低く下げられていた。


「すみませんすみませんすみません! お願いですから、黙っていてもらえないでしょうか……頼みますお願いします祈ります……」


堂本は大声で慈悲を請うように懇願しだした。雄吾が周りを見渡したほどの大声だ。
えっと、とりあえず俺たちに祈られても。


「いや、そこまで言われたら、なあ。そんなあたしら、とって食おう言うんちゃうし……」

「ああ、何も言わず尾けてきた俺達もよくはないっつーか……」


咲も俺もしどろもどろになって答える。


「顔上げろ」

「顔上げなさい」


まさかの命令形が、ゆうかと雄吾の方から、同時に聞こえた気がする。


「は……」


言われるまま顔を上げた堂本の眼鏡には涙が落ちたような痕があった。


「謝るのはそちらの勝手だが、理由を言わない限り無駄な行いだ」

「そうね。わかるように説明してもらいたいわ。そこまでするってことは、相当な理由があるみたいだし」


ゆうかは目を細め、口角を吊り上げ、小悪魔の微笑みを見せた。『小』は不必要かもしれない。
雄吾も同様、恐怖を覚える笑みを見せる。


「は、はい……」

「今日のところは、いいわ。帰って。月曜日、お話伺いに行きますから」

「あ、はい……」


堂本はゾンビのように立ち上がり、ふらふらと家の方へ歩いていった。


「なんだかおもしろいことになりそうね」


小悪魔はまた残忍に微笑む。

主導権を握ることなんて、この2人にかかれば、日本語を喋るようなことだ。
気がつけば自然と、そうしている。














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