私立秀麗華美学園
*
ヨハンたちが帰国した数日後のLHR。
やっと秋めいてきた10月中旬のその日、教壇にはゆうかと笠井が立っていた。
「多数決の結果、A組の出し物は浴衣喫茶に決定します」
後期の学園祭についての話し合いだ。
学園の定例行事であり、また保護者らの交流会という一面も持った、年2回の学園祭。
今回は笠井から妙な申し出を受けることもなく、内容もあっさりと決まった。
少なからず前期のC組の盛況ぶりに影響を受けたような決定である。
「学園祭当日は11月12日。1ヶ月ないのよね。ま、頑張りましょ」
しかし浴衣喫茶って、たぶん花嶺家の私物で衣装は事足りるだろうな。
淳三郎氏が聞いたら大喜びしそうだ。
周りがざわっと小声で話し合いを始める中、俺は檀上で決める事柄をてきぱきと黒板に書きつけていくゆうかを眺めていた。
好きなんだなあと思った。
チョークを持つ白い指と、まくったカッターシャツから伸びた腕。体を動かすたびに流れるキャラメルブラウンの髪。
ゆうかを形作る要素のひとつひとつが好きだとか、そういうことは今更だっ
た。
ただ、なんというか、独り占めしたいと思うようになった。
雄吾に言われてこれがいわゆる独占欲かと気づいた。
ヨハンとのことがあって、妙に落ち着かない気分になって、嘘をついたことがばれたとわかってなお、普段ならとらないやり方でカルラに協力をした。
そのあとまたゆうかに「何やってんの?」とでも言われていたら、いつも通りすいませんでしたーで終わってたのかもしれない。
しばらく経てば嫉妬という感情にも気付いただろう。
だけどゆうかは怒らなかったし俺を問い詰めもしなかった。
それから妙な関係が始まって今、浮かんだ考えは以前なら思いもしなかったもので、だけどそれが間違っていないであろうという確信を持っていた。
ゆうかは、俺ともめたくないと思っている。
けんかしたくないから、今回のことについて、口に出すことを避けている。
楽しくない会話のひとつひとつを思い出し、俺は机に突っ伏した。
ヨハンたちが帰国した数日後のLHR。
やっと秋めいてきた10月中旬のその日、教壇にはゆうかと笠井が立っていた。
「多数決の結果、A組の出し物は浴衣喫茶に決定します」
後期の学園祭についての話し合いだ。
学園の定例行事であり、また保護者らの交流会という一面も持った、年2回の学園祭。
今回は笠井から妙な申し出を受けることもなく、内容もあっさりと決まった。
少なからず前期のC組の盛況ぶりに影響を受けたような決定である。
「学園祭当日は11月12日。1ヶ月ないのよね。ま、頑張りましょ」
しかし浴衣喫茶って、たぶん花嶺家の私物で衣装は事足りるだろうな。
淳三郎氏が聞いたら大喜びしそうだ。
周りがざわっと小声で話し合いを始める中、俺は檀上で決める事柄をてきぱきと黒板に書きつけていくゆうかを眺めていた。
好きなんだなあと思った。
チョークを持つ白い指と、まくったカッターシャツから伸びた腕。体を動かすたびに流れるキャラメルブラウンの髪。
ゆうかを形作る要素のひとつひとつが好きだとか、そういうことは今更だっ
た。
ただ、なんというか、独り占めしたいと思うようになった。
雄吾に言われてこれがいわゆる独占欲かと気づいた。
ヨハンとのことがあって、妙に落ち着かない気分になって、嘘をついたことがばれたとわかってなお、普段ならとらないやり方でカルラに協力をした。
そのあとまたゆうかに「何やってんの?」とでも言われていたら、いつも通りすいませんでしたーで終わってたのかもしれない。
しばらく経てば嫉妬という感情にも気付いただろう。
だけどゆうかは怒らなかったし俺を問い詰めもしなかった。
それから妙な関係が始まって今、浮かんだ考えは以前なら思いもしなかったもので、だけどそれが間違っていないであろうという確信を持っていた。
ゆうかは、俺ともめたくないと思っている。
けんかしたくないから、今回のことについて、口に出すことを避けている。
楽しくない会話のひとつひとつを思い出し、俺は机に突っ伏した。