私立秀麗華美学園
忙しい毎日が続きゆうかはほとんど毎日放課後も仕事をしていた。

一緒に過ごす時間も減っていたが、学園祭が終わるまでは泣きごとも言えない、と思った。
これが終わったらまた、何かが変わる、変えられるはずだと、俺は信じていた。


企画自体には大きな変更も問題もなく、俺の調理パートも事前の仕事は全部終わった。
あとは当日材料を運んで実際に調理をするだけだ。


そうして学園祭前日。

午後の授業がカットになって、A組はまた様々な装飾がほどこされ始めていた。
食事場所にはござが敷かれてそれぞれの机には一輪挿しが置かれている。

壁には解読不能の書道の文字が貼られている。すげー書家のものなのか、誰かが授業で書いたものなのか、俺には判別できないが。


俺は調理室の準備を終え教室に戻ってきて、真二が手伝っているチラシの切り取り作業を手伝っていた。


「いっよいよだなー」

「楽しみだねー。今回はB組の映像がすごいらしいよ」

「見にいかなきゃなー」


行事ごとが無条件に好きで浮かれている真二とまわる出し物の相談をしている馬渕。

ゆうかもまわる時間、多少はあるみたいだったから一応シフト合わせたけど……どうだろう、今のまま、一緒にまわれるかな。

再告白とか雄吾には大見栄切った俺だったが、もちろんノープランだった。気づいてみれば当日は明日である。どーしよ。うわ、どーしよー。


はさみで空をチョキチョキやりながら椅子をぶらぶらさせていると、うしろの黒板の前に槙野さんが立っているのが見えた。

椅子を持ってきて乗っかり、思いっきり腕を伸ばしている。

どうやら、手に持ったプレートを黒板の上のでっぱりにひっかけたいが届かないらしかった。横顔が苦しそうだ。


俺は槙野さんとプレートと、目指すでっぱりをじーっと見つめた。

槙野さんの身長は、咲より少し高いぐらいだから150後半だろう。
全力で伸ばした指の先とでっぱりまでの距離が大体10cm強。

身長を158、距離を12cmとしたら必要な最低身長は170cm。
俺の身長が171か2。

……ぎりだな。


教室には笠井や他にも余裕そうな男子はいたが、前の方でゆうかの説明をを聞いている。
目の前の巻き毛は俺とどっこいどっこい。


あれ、どう考えても、申し出て届かなかったら悲惨だよなあ……。
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