私立秀麗華美学園
「さっきなんて言ったのよ」

「え?」

「わたしは和人の姫なんでしょ?」


姫。
その言葉が指す意味を一瞬考える。


「こんなこと考える日が来るなんてびっくり。わたし初めて、和人に嫌われるっていう可能性考えたんだから。避けられるなんて思ってもみなかった」

「違うよ、全然違う、逆だよ。ごめん。学園祭が終わったら話そうと思ってた。
俺はゆうかのことがずっと好きだよ。
笠井よりもずっと前から。
好きすぎて、よくわかんねーけどなんか、ヨハンと楽しそうに笑ってるゆうか見て、めげた」

「何それ、大体ヨハンとペア組んだ時に止めない和人が悪いのよ!」

「えー!?」

「そうじゃなきゃこんなことにもなってないのに!」


だんだんよくわからなくなってきた。ゆうかは実は嫉妬をしていて、だけど、いや、だから? 今俺をものすごい勢いで怒っている。


「いろいろ考えたりしてたけど、俺がゆうかを嫌いになることは一生ないよ」

「そんなのわかんないでしょ」

「ないよ」


それは自信を持って言えることだった。嫌いになんて、今更どうしてなれるだろう。


「絶対、ないよ。あと、嫉妬してくれて嬉しいんだけど」

「いや、やっぱり嫉妬じゃない。腹立っただけよ、うん。わたしには説明も何もないくせにやたらと女の子と喋ってるんだもん」


嫉妬したから腹立ったんじゃないのかな、と思ったけど口には出さなかった。
っていうかそれどころじゃない、嬉しすぎて。目の前で腕組んで俺をにらみつけているゆうかがかわいすぎて。

思ったことはやっぱり顔に出てしまっていたらしい。


「何にやにやしてんのー!」

「してないしてない」

「ちょーし乗んないでよね! 勝手に腹立てたのはわたしのせいだけど、もともと何も言わない和人も悪いんだから!」

「いや、俺が全部悪いよ」

「またそうやって、あんたがわたしを甘やかすのよ」


ゆうかは腕組みをといて、ため息をついた。
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