私立秀麗華美学園
12章:アイラブユーの伝え方
一大行事が終わって気が抜けた日々を過ごしていると、あっという間に暦は12月に突入していた。

今日でちょうど期末テストの1週間前になる。部活が休みなので放課後の教室に残っているメンバーもいつもと少し違っていた。


「ちょっと生徒会室行って来る。すぐ終わるから、待ってて」

「わかった」


急ぎ足で教室を出るゆうか。別に何時間でも待ってるけど、と思いながらさっきの地理の時間の小テストに目を移す。


「……すげぇな」


この、嫌味ったらしい声をかけられるのにもいい加減慣れてきたところだ。


「解答欄全部埋めてて50点満点のテスト5点って」

「うるせーよ」


進、は、前の席に座って俺の手からプリントをかっさらった。

ちなみに笠井進を名前で呼ぶことを実践するにあたって、特に抵抗は感じなかった。
学園祭前日のことには素直に感謝してたし、あの状況で向こうから歩み寄られればそれを返すのは簡単だった。
要はきっかけだったんだな、と思う。


「五大湖とかおいこれ地理じゃねえ俺でもわかるぞ。常識だろうがよ」

「どうせ俺は非常識ですよ」

「ゆうかに見限られるのも時間の問題だな」

「るせーよぼけ」


こんな風にゆうかの話をすることさえできるようになっていた。

しかも話してみれば、進は結構なお喋りだった。今もぶつぶつぶつぶつと五大湖の形と名前のリンクのさせ方を喋っている。……言い方を変えれば、俺が間違えた問題の答えの覚え方を教えてくれている。

そもそも女子には絶大な人気を誇る笠井進だが当然のように男友達は少ない。

声に出しては口が裂けても言えないが、これはちょっと、なつかれたんじゃないかな、と思っていたりする。





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