私立秀麗華美学園
「和人が、しっかりしている、ように見える」

「こんな世話焼きやったっけー? 気い遣うことには慣れてんやろけど」

「……はあ」


ちょっとしんどそうな表情の雄吾が咲に「手」というと「はーい」と返事をして咲は洗面所へとんでいった。やっぱ洗ってなかったのかよ、と思ってため息をつくと雄吾が笑った。


「成長だなあ」

「あのな」

「腹、減った」


単語だけを残してぼすっとベッドにまた寝転がる。サイドチェストの上のコップが空になっていたので冷蔵庫に向かった。

……うーん、まあ、手洗ったのか? とかは雄吾っぽかったかもしれない。でも成長だなあって。俺は子供か、と思ったけど確かに今までの関係性から言うとそんな感じだったな、とも思う。


ペットボトルを取り出すと戻ってきた咲に「あたしがやる」と奪われた。俺が成長とかいうより咲が大人げなくなったんじゃないかと思う。


そうだ、腹減ったって言ってたんだった。
病人食っつったらおかゆだよな、水多めで炊いたらできるんだっけ、と思いながらこっそり炊飯器を覗きに行く。
釜にはおかゆ用の水の量を示す線があった。おお、親切なもんだなあ。

冷蔵庫を覗いたら梅干しがあった。やったことないけどチャレンジしてみるか、と思った時ノックの音がした。ゆうかだった。


「やっぱり咲、そのまんま来ちゃって。雄吾、様子どうなの?」

「熱下がってるって。今は大丈夫みたいだ」


コップに手を伸ばして雄吾がまた上半身を起こした。大きく一口飲んでゆうかの方を見る。


「わざわざすまない。悪いが2人の勉強、見てやってくれ」

「ああ、そうね。特に和人、学園祭頑張ってた分またちょっと危ないものね」


俺よりずっと仕事の多かったゆうかにそれを言われるのは妙な感じだったが何しろ事実だ。準備期間中は何時間分の授業を計算に費やしたことだろう。
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