私立秀麗華美学園
「というわけで、食事は食堂からもらって来てくれれば十分だ」


俺の動きから考えを見抜いていたのであろう雄吾が言った。

見抜いていたあたりさすがと言わざるを得ないが、だけどやっぱり今の発言は雄吾らしくない。思慮に欠ける。なぜかって、


「ごはん! あたしが作る! 作らせて!」


こいつがこういうことを言い出すことぐらい、俺にだって予測できる。


「作るって、まともに料理したことないんだから、やめときなさい。病人に食べさせるものじゃないわ」

「おかゆぐらいできるよたぶん! 雄吾にごはん作ってあげたいいいい!」


こうなると厄介だ。雄吾のこととなると一途に頑固な咲である。
自らの失言に気付いたらしい雄吾は俺をちらりと見ると、素知らぬ顔をして布団に潜ってしまった。


駄々っ子のように騒ぎ出した咲に、ゆうかも諦めモードだ。どうせテストどころではないだろう。


「作るの作るの作るのー!」

「だから咲……」

「わかったって、おかゆな。どうせお前勉強できねーもんな。作ればいいよ手伝うから」


ぱあっと顔を輝かせて咲がやったあと叫ぶ。ほんとに子供だ。ゆうかは苦笑して俺を振り返った。ほんとにやるの? という表情。


「だっておかゆだよ」

「だけど咲よ? って、わたしが言えることじゃないのはわかってるけど」

「ゆうかも作ろーや! 和人に見といてもらって!」

「はあ!?」


なんでよ、と拒否するゆうかにへらへら根拠のない大丈夫を連呼する咲。

念のため確認しておくが今もんだいになっているのは、鍋に米と水を入れて煮ると勝手にできあがるあの料理のことである。
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