私立秀麗華美学園
「じゃあ再チャレンジしようよ」

「うー……」


得意なことより苦手なことが圧倒的に少ないゆうかなので、こういう姿はレアだ。
料理自体がってよりそっちが嫌なんだろうな、と思った。気取ってはいないけどプライドの高さは人並み以上にある。


咲が戻ってきて、ゆうかはようやく覚悟を決めたようだった。


「ところで和人は、おかゆ、作れるの?」

「まあおかゆならたぶん」

「え、和人って料理できるんじゃないん?」

「お菓子はたまーに作ってるけど料理はしないから。
お菓子はさ、レシピ通りにやればいいけど、料理は食材にもよったりするから、勘が必要なんだよ。経験で培われる勘。って、雄吾見ながらよく思ってる」


ふーんと言いながら咲が米びつを台に置いた。あんまり伝わってないなこりゃ。しゃあねえけど。


「おかゆ以外、何作ったらいいと思う?」

「おかゆだけで十分でしょ……!」

「俺らの夕飯も作ってよ」

「そっか、そやねー。もう6時前やしね」

「どうしてそんな安請け合いするの!?」


慌てるゆうかがおもしろくて俺はわざと難しそうな献立を上げてみた。大変さをわかっていない咲が料理を選ぶたびにゆうかが説得してやめさせる。

結局俺たちの夕飯は、冷蔵庫の中身とも相談して、焼き魚と生野菜のサラダと大根の味噌汁になりそうだった。


「要するに、魚は焼けばいいし、野菜は切ればいいし、味噌汁は和人に任せればいいねん」


咲の理不尽な決定に、俺はおとなしく従うことにした。料理はそろそろやってみたかったし、この2人に大根の皮を剥かせるなんてできるはずがなかった。
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