私立秀麗華美学園
「見てたらね、ちょっと気になることがあったの」

「風來の社報に!? なんなん!?」

「大したことじゃないかもしれないんだけど。協力関係にある著名人リストみたいなところがあるでしょ、そこに新しく加わった人の名前に見覚えがあって、調べたの。
そしたらその人、生物学者だったのよ」

「生物学者? サービス業メインの風來にか?」

「そう、だから気になって。
それでついでにひとつ前のうちと月城のもよく見てみたの。
そしたらね、うちは新期加入者がいなかったけど、月城にはいたわ。新期の生物学者。今までそうそうそんなことなかったのに、いきなり2人よ」

「遺伝子操作と、生物学者か……」


2人。
うちは食品に関わる部署も持っているから生物学者の協力を得ることが不思議とは言えない。
それにしても引っかかる。なんの先入観もなければ素通りしていたかもしれないが、結びつけて考えてしまうことは避けられない。


「それって、うちや月城があのようわからんやつに加担してるかもしれんってこと?」

「2つの事実を繋げることができてしまう、そんな段階にすぎないわ。
でもどうしても、気になって」


不穏な動きを見せていると感じていた組織が、自分の家に関わっているのかもしれない。

知って、どうするべきかわからなかった。踏み込むべきか退くべきか。

事実を確かめる? 確かめて、もし当たりだったとして、何ができるというのだろう。


「……最初から俺たちが、気にするようなことじゃなかったのかもな」


思わず漏れた感想に反対する人はいないようだった。口をとざしていた雄吾が小さく咳をする。


「とりあえず、様子見かしらね。気にはなるけど」


ゆうかの言葉に咲がため息をついた瞬間、ノックの音がした。
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