私立秀麗華美学園
「あれは別に、過保護でうっとうしいとか、そういう意味じゃないから」
「そうなんだ」
じゃあどういう、と口に出しかけ、顔を見て止める。
ゆうかは毛布を頭からかぶり直して両端を口元にもってきた。
「……心配させたくないから、っていう、そういう意味だから」
視線を流して目を合わせてくれないゆうか。
暖炉の傍で顔の色がわからないのが惜しいなあと思った。
「……ちょっとなんか言いなさいよ」
「にやけないように我慢してる」
「ちょーし乗んなよこの野郎」
「口が悪いですよ」
「……言わないよりは、マシなの」
ゆうかは毛布を膝に落とし、こっちを見て口を開いた。
「雄吾も頑張ったわけだし。
ひとのこと言えないなあと思ったのよ、わたしも。思っても口に出さないこと結構あるわ。
なんでもかんでも口に出すってのは違うけど、こういうことは、たまには伝わる形にしなきゃって」
正直過保護でもなんでもよかったけど、嬉しいのはそれを言葉にするまでの過程だった。
伝わらなかった思いを取り戻して、言葉に換えて送り出すなんて、そんな面倒な過程を、嬉しく思わないわけがない。
「心配はするけど、包丁持つのは頑張って止めないでおくよ」
「だから、コックはたくさん雇うのー」
「将来お客さん招く時とかにさ、りえさんもたまに軽食作ってくれるし」
「……その時は」
英語の教科書で顔を半分隠して言う。
「和人が作ればいいでしょ」
言葉を深読みするには勇気が足りなかった。
それでも、思ったよりは近かったんだなと、俺も数学のノートで表情を隠した。
「そうなんだ」
じゃあどういう、と口に出しかけ、顔を見て止める。
ゆうかは毛布を頭からかぶり直して両端を口元にもってきた。
「……心配させたくないから、っていう、そういう意味だから」
視線を流して目を合わせてくれないゆうか。
暖炉の傍で顔の色がわからないのが惜しいなあと思った。
「……ちょっとなんか言いなさいよ」
「にやけないように我慢してる」
「ちょーし乗んなよこの野郎」
「口が悪いですよ」
「……言わないよりは、マシなの」
ゆうかは毛布を膝に落とし、こっちを見て口を開いた。
「雄吾も頑張ったわけだし。
ひとのこと言えないなあと思ったのよ、わたしも。思っても口に出さないこと結構あるわ。
なんでもかんでも口に出すってのは違うけど、こういうことは、たまには伝わる形にしなきゃって」
正直過保護でもなんでもよかったけど、嬉しいのはそれを言葉にするまでの過程だった。
伝わらなかった思いを取り戻して、言葉に換えて送り出すなんて、そんな面倒な過程を、嬉しく思わないわけがない。
「心配はするけど、包丁持つのは頑張って止めないでおくよ」
「だから、コックはたくさん雇うのー」
「将来お客さん招く時とかにさ、りえさんもたまに軽食作ってくれるし」
「……その時は」
英語の教科書で顔を半分隠して言う。
「和人が作ればいいでしょ」
言葉を深読みするには勇気が足りなかった。
それでも、思ったよりは近かったんだなと、俺も数学のノートで表情を隠した。