私立秀麗華美学園
改めて自分の服を見下ろす。濃い赤色で、ちょっと暗い色。うん、えんじ色だ。

ゆうかの服も驚くほど同じ色味をしていた。赤にも紫にも多くの派生色があるはずなのに、こんなにそっくりな色をした洋服も珍しい。


「……みのるか」

「……真理子ね」


ほとんど同時に呟いた。付き人2人は素知らぬ顔で笑みを浮かべている。

4人で顔を合わせることも行動を共にすることもままあることなので、みのると真理子さんが通じているのは当たり前だが、それ以前に2人はなんと、幼馴染みだった。
小学校から高校まで同じ学校で、卒業と同時にうちへ来たみのると、4年遅れて花嶺の家に雇われた真理子さん。

2人の繋がりを知った中1の俺たちは、あやしい、といろいろ邪推していたが、何を聞いてもみのるの最柔級笑顔に、気圧されてというのもおかしいが、阻まれてしまい、真相の究明は諦めたのだった。


そんなわけでただの同業者という以上に2人の結びつきは強くて、相談事は事務的なことに留まらないらしいのだった。


「カジュアルだなあと思ったらゆうかの衣装と合わせてたのか……」

「どう見てもブランドまで一緒だわ……なんか変だと思ったのよ、5種類ぐらい色選ばされたし」

「否定は致しません」


あっさり言って真理子さんは俺たちを急かした。明らかにお揃いの衣装を着たゆうかと俺は並んですりガラスの扉を抜ける。


外は真っ暗で、石畳の両脇に埋め込まれたライトを頼りに歩かなければならない。みのるに差し出されたコートを羽織るついでにゆうかの顔を盗み見たが、表情はうかがえなかった。

俺としては、もちろん、嫌なはずもない。愛しの姫君と揃いの衣装だ。恥ずかしさはないわけでもないけど。
気になるのはゆうかの反応。


「……図られた」

「どんなドレスにしたのか聞いたけどゆうか答えてくれなかったもんなあ」

「そうだったわね。先にわかってれば羽織り物でも準備したのに」

「嫌ならジャケット脱いでることにするけど」

「……いいよ、別に。素材が違うから、ホールの照明で、たぶんちょっとは違って見えると思うし」


声のトーンでとりあえず怒りを買ったわけではなさそうだということがわかったので安心しつつも、あとでみのるを問いたださねばならない、と思ってホールまでの道を進んだ。
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