私立秀麗華美学園
10mほども進むと息の詰まる緊張は溶けて、ようやく向かうべき方向を探す余裕もできた。
天井の中央からぶら下がるでっかいシャンデリアの輝きに包まれた会場にはテーブルが数多く並んでいて、開場まではとりあえずクラスごとに集まっていることになっている。
2年A組のテーブルを目指し、ため息をついて歩き出した。
「何度経験しても喜ばしくない一瞬ね」
ゆうかの方を見る隙もやっとできる。あらゆる方向から光を受ける会場の中では、確かにゆうかの衣装は地の色よりも随分明るく見えた。
「ね、色味違うでしょ」
「これも計算のうちなのかな」
「かもね。さすがに親たちにまで確認とってはいないだろうし」
A組のテーブルにつく。テーブルを囲むクラスメイトは半数ぐらいが集合していた。
真二や友達と言葉を交わしつつ、改めてゆうかを眺めた。
ドレッシーなワンピース、という感じだ。今は明るい赤に見える。形のいい爪も同じ形に塗られていた。
髪型は、大きくカールをかけて、ポニーテールにしてある。束ねた髪の根元はキラキラ光る花の形の飾りがついたもので挟んであった。
そして、さっきは気付かなかったが、2:8ぐらいで分けた前髪の2の方が全部耳にかかっていてピンで留めてある。髪がかけられているのは右耳だ。俺の部分オールバックと同じ場所である。
すっかりのせられたな、と思った。
「ねえ」
百合子さんと会話をしていたゆうかが突然俺を呼んだ。
「あれ、三松さんよね」
同じ方向に視線を向けると、水色でたっぷりフリルのついたドレスを着た、三松あやかが会場に入ってくるところだった。
半年以上前になるか。C組の堂本が見初めた相手。そしてこの学園を隠れみのに生活している"特別な生徒"のひとり。
遠目で見ても緊張が伝わってきた。少し前まで普通の家庭で育った彼女には、慣れない場、どころの話ではないだろう。
「当たり前だけど、ひとりで入ってきたね」
「ああ。雄吾によれば堂本とはひっそり続いてるみたいだけど」
彼らは恋愛ご法度の身であると言う。堂本も三松も表向きにはフリーの生徒だ。
公的な場で行動を共にできる関係には、ないのだ。
天井の中央からぶら下がるでっかいシャンデリアの輝きに包まれた会場にはテーブルが数多く並んでいて、開場まではとりあえずクラスごとに集まっていることになっている。
2年A組のテーブルを目指し、ため息をついて歩き出した。
「何度経験しても喜ばしくない一瞬ね」
ゆうかの方を見る隙もやっとできる。あらゆる方向から光を受ける会場の中では、確かにゆうかの衣装は地の色よりも随分明るく見えた。
「ね、色味違うでしょ」
「これも計算のうちなのかな」
「かもね。さすがに親たちにまで確認とってはいないだろうし」
A組のテーブルにつく。テーブルを囲むクラスメイトは半数ぐらいが集合していた。
真二や友達と言葉を交わしつつ、改めてゆうかを眺めた。
ドレッシーなワンピース、という感じだ。今は明るい赤に見える。形のいい爪も同じ形に塗られていた。
髪型は、大きくカールをかけて、ポニーテールにしてある。束ねた髪の根元はキラキラ光る花の形の飾りがついたもので挟んであった。
そして、さっきは気付かなかったが、2:8ぐらいで分けた前髪の2の方が全部耳にかかっていてピンで留めてある。髪がかけられているのは右耳だ。俺の部分オールバックと同じ場所である。
すっかりのせられたな、と思った。
「ねえ」
百合子さんと会話をしていたゆうかが突然俺を呼んだ。
「あれ、三松さんよね」
同じ方向に視線を向けると、水色でたっぷりフリルのついたドレスを着た、三松あやかが会場に入ってくるところだった。
半年以上前になるか。C組の堂本が見初めた相手。そしてこの学園を隠れみのに生活している"特別な生徒"のひとり。
遠目で見ても緊張が伝わってきた。少し前まで普通の家庭で育った彼女には、慣れない場、どころの話ではないだろう。
「当たり前だけど、ひとりで入ってきたね」
「ああ。雄吾によれば堂本とはひっそり続いてるみたいだけど」
彼らは恋愛ご法度の身であると言う。堂本も三松も表向きにはフリーの生徒だ。
公的な場で行動を共にできる関係には、ないのだ。