私立秀麗華美学園
しかし悩むなと言われて悩むのを止めるほど俺はおめでたい人間ではない。
頭の回転が遅いということは、それだけ悩む時間が増えるというわけで。


とりあえず今は依頼だ。

えーっと、依頼者はC組三松あや香。相手は事情あり堂本くん。内容は両想い。

しかしその事情というのも俺の素晴らしい一言により考える意味を剥奪され、結局いつも通りに進めることにした、と。


……なんだ。俺の仕事、ねーじゃん。


いつも通りということは、俺に仕事はないということだ。

なぜなら俺が聞き込みをすれば挙動不審と言われ交代させられ、作戦を立てようにも他に適切な人物がいすぎるからだ。


なーんだ。なーんだ。
仕事、ねーんじゃん。





「和人、今日も三松さんに話聞いてから帰るから、先に帰ってて」

「へーい」


学校から寮までおよそ5分。

それでもやっぱり、ゆうかと一緒に帰る方がいい。
同じ寮に帰る姫と騎士たちを見ながら、ため息をついてとぼとぼと帰った。


「おー、いたのか」

「いたのかとはなんだ」


部屋に入ると、雄吾が机を前に座っていた。


「何やってんだ?」

「復習」


ふーんあっそ。
日課だということは知っているし焦りを覚えないわけでもないのだが、到底マネできない。


「でも、そろそろ中間だなあ」

「2年になって最初のテストだ。和人も少しは焦らなくていいのか?」

「そこまでじゃねえよ……」


とは言ったものの、焦るべきではあるのだろう。

俺は頭が悪いというわけでもない、と思いたい。
恐らく普通の高校生の中に紛れるとすれば、上の中と言ったところだろう。
しかし学校が学校なわけで、この前のテストでは108人中97位だった。


スペシャルスクールの中で、最下位ではないという結果。

これを俺はそこまで気にしているわけでもないのだが、ただちょっと、毎回毎回ゆうかに報告する時、ゆうかとの順位差に落胆するだけだ……。
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