私立秀麗華美学園
立食形式のためほんの少しだけ料理をとって口へ運び、俺たちも動き回ることにした。
俺から声をかけにいくべき人物はみのるがリストアップしてくれているそうなので捜しつつ、かけられた声に応じつつ、テーブルの間を移動した。
それにしても、恐ろしいほどの笑顔の量だ。
呼び止める声に振り向けば笑顔。声をかければ笑顔。別れ際にも隙のない笑顔。
取引先に挨拶するってのに仏頂面では話にならないので当たり前のことではあるのだが、だんだん全ての笑顔が仮面に見えてくる。ここにいる人間たちにとっては馴染みの仮面。装備を忘れる事などない。条件反射で浮かびあがる仮面だ。
かく言う俺も頬の筋肉を駆使して、仮面を保っている。「にこにこ」の時には意識もしなかった筋肉だ。
子会社と新しい取引先の橋渡しとしてお世話になった会社の副社長と別れ、リストの4分の1も回っただろうかというところで、例の3人の姿を見つけた。
「あら、和人」
気付いた姉ちゃんが兄ちゃんと那美さんに知らせてくれる。
しとやかに手を振る那美さんにぺこりとお辞儀をしながら、近づいて行った。
3人共、かなりきっちりと煌びやかに正装している。那美さんはあまり見ないロングドレス姿だし、姉ちゃんのドレスはスパンコールに覆われて輝きを放っている。兄ちゃんの三つ揃いはよく知ったブランドの最新作だ。
「どーも」
「久しぶりねー。って言っても前の6月の学園祭以来か。食事会の時は悪かったわね」
「ふふ、あの時のご様子は、和音ちゃんにちゃあんとお伝えしてあるからね、和人くん」
ちゃあんと、を強調して言った那美さんと姉ちゃんが視線を合わせて怪しい笑みを交わす。……正しく伝わってりゃいいんだが。
「おい、ゆうかちゃんはどこだどこだどこだ」
「残念でした。別行動」
開口一番それなのかよ。と思って、言わなければいけないことがあったんだったと思い出した。
俺から声をかけにいくべき人物はみのるがリストアップしてくれているそうなので捜しつつ、かけられた声に応じつつ、テーブルの間を移動した。
それにしても、恐ろしいほどの笑顔の量だ。
呼び止める声に振り向けば笑顔。声をかければ笑顔。別れ際にも隙のない笑顔。
取引先に挨拶するってのに仏頂面では話にならないので当たり前のことではあるのだが、だんだん全ての笑顔が仮面に見えてくる。ここにいる人間たちにとっては馴染みの仮面。装備を忘れる事などない。条件反射で浮かびあがる仮面だ。
かく言う俺も頬の筋肉を駆使して、仮面を保っている。「にこにこ」の時には意識もしなかった筋肉だ。
子会社と新しい取引先の橋渡しとしてお世話になった会社の副社長と別れ、リストの4分の1も回っただろうかというところで、例の3人の姿を見つけた。
「あら、和人」
気付いた姉ちゃんが兄ちゃんと那美さんに知らせてくれる。
しとやかに手を振る那美さんにぺこりとお辞儀をしながら、近づいて行った。
3人共、かなりきっちりと煌びやかに正装している。那美さんはあまり見ないロングドレス姿だし、姉ちゃんのドレスはスパンコールに覆われて輝きを放っている。兄ちゃんの三つ揃いはよく知ったブランドの最新作だ。
「どーも」
「久しぶりねー。って言っても前の6月の学園祭以来か。食事会の時は悪かったわね」
「ふふ、あの時のご様子は、和音ちゃんにちゃあんとお伝えしてあるからね、和人くん」
ちゃあんと、を強調して言った那美さんと姉ちゃんが視線を合わせて怪しい笑みを交わす。……正しく伝わってりゃいいんだが。
「おい、ゆうかちゃんはどこだどこだどこだ」
「残念でした。別行動」
開口一番それなのかよ。と思って、言わなければいけないことがあったんだったと思い出した。