私立秀麗華美学園
「雄吾くんには、本当にいつも、お世話になっていて」


これこそただの口上ではないので力を入れて言うが、こちらこそ、と返される。
一連のやり取りを、雄吾はむず痒そうな顔で見守っていた。


「そういえば、実際、風邪の時は世話にはなったな」


両親方との会話を終えて、少し離れて雄吾と話す。


「まあおもしろいもん見れたし」

「忘れろ」

「それはさておき、ゆうかの衣装の色知ってたんだな」

「ああ」


俺の衣装を見て、自分で選んだのかと尋ねてきた雄吾。


「例によって例の如く、咲からの情報でな」

「あの時言ってくれりゃ覚悟もできたのに」

「言ったら言ったでゆうかに伝えるか悩んだだろ」


まあ、それは確かに。


「大体コミュニケーションが足りてないんじゃないか? 話題にのぼらないこともなかっただろうに」

「いっぺん聞いたけど説明めんどくさがられたんだよなあ……コミュニケーション不足か……」

「冗談を真に受けるな」


真顔で雄吾が言うので絶句する。
冗談言う時ぐらい冗談言うぞって顔しろよな……と思ってぶすくれていると、雄吾が噴き出した。


「……雄吾も、変わったなあ」

「褒め言葉として受け取っておこうか」


異存はなかったのでちょっと笑って、黙って目を逸らした。
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