私立秀麗華美学園
別れ際、雄吾に、ちらりと見かけたゆうかが疲れた表情をしていた、と情報を貰ったためそのままみのるに告げた。


「でしたらそろそろ合流されますか?」

「あー、あと何人いる?」

「出会えていないご要人は、3,4人程度でしょうか」


時計を見ると時刻は丁度8時。パーティーは9時半までだから、あと1時間と少しだ。


「あと30分は粘っとく。真理子さんに連絡とれるよな? 8時半に、A組のテーブルって伝えてくれ」

「承知致しました」


ゆうかのことは気になったが、このまま会えずじまいという事態は避けたい人物も残っている。
30分間、なるべくゆったりと余裕を持った態度を維持しながら、目を皿にして目当ての人物たちを捜索した。

甲斐あって、最低条件はクリアした、と言える程度の成果は残せたため、ため息をつきながら待ち合わせのテーブルに向かった。


「お疲れ様」


ゆうかは既に到着していて、目が合うと力無く笑った。


「ゆうかこそ。大丈夫?」

「うん、結構疲れた」


ホールの壁にもたれかかって立つゆうかには疲労の色がはっきり見えた。伏せられた目は焦点が定まっていないし、チークを入れていないらしい頬は冷たいほど真っ白だ。


「なんかいろいろ考えたりしながら笑顔作ってたから、かな……」

「休憩、しようか。座れるところあったっけ」

「確か、ギャラリーの方へ上がるとテラスがございます。外になりますので、冷えますし、2階ですが」


真理子さんの言葉にゆうかがうなずく。そこで構わない、と無言の受け入れ。


「では、お二人の上着をお持ち致します。お先にお行きください」


みのるがクロークのほうへ歩いて行って、俺たち3人はギャラリーへの階段へと向かった。
< 396 / 603 >

この作品をシェア

pagetop