私立秀麗華美学園
「クリスマスかあ。イブだけど」


中等部に入ってからは毎年同じクリスマスを迎えている。
イブのパーティーで力尽き果て、翌日は午前中いっぱい寝てしまうのが常だ。


「だから何ってわけでもねーけど、なんか、忘れてたな」

「サンタさんって年でもとっくにないしね。シャンパン飲んで、並んでるチキンとかにも口つけたけど、味わってる暇もなかったし」


しみじみ呟く俺たちに真理子さんが驚いた表情を見せる。


「……装飾も、赤と緑がメインでしたが。BGMもクリスマス関係の物が流れていましたし」

「BGM? 全っ然気付かなかった」

「世間様は今頃浮かれてるわけね。最近あんまり街にも行ってなかったし」


自嘲気味にゆうかが漏らす。イベントはイベントでも、俺たちにとってはパーティー自体がメインという認識になっているから、仕方のないことだ。


「それこそ、世間のカップルはここぞとばかりに盛り上がっておいででしょうね」

「なんにでもかこつけるのよね」

「まあ、月城も花嶺も、家としては仏教ですから」


みのる節が炸裂するも慣れっこになった2人は気にも留めない。盛り上がる世間のカップルの中にキリシタンが何人いるかなんてことは誰も突っ込まない。


「寂しいな。こうやって、気疲れするばっかりの行事に気を取られて、季節感まで狂っちゃうなんてこと」


切なげに、冷たい夜空に顔を向けて言ったゆうかの白い横顔が綺麗で、しばらく見惚れていた。


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