私立秀麗華美学園
「まだ下に11人もいるし」

「10人だな。調べたところ、堂本は100位より下の順位だった」

「そこまで目立たねえようにしてんのか」

「本気でやったところで意味もない」


数式の天才くん、か。
本当に、他にも似たようなやつがいるのだろうか。


「恐らくいるだろうな、他にも。少なくともその内の数人はこの学園にいると見て間違いない」


俺の考えを見透かしたように雄吾が言った。


「じゃあさ、今までの転校生のデータとか集めれば……」

「そうだな。数は絞られるはずだ。調べたところで、ということではあるが、どうも気になってしょうがない」


雄吾はくるりと机に向き直った。


「ま、その前に学生としての本分、試験だな」


雄吾はゆうかに比肩するほどの秀才で、四六時中一緒にいる俺の目にすら、常に勉強しているように見える。

しかしそれも雄吾がやると、ガリガリといった印象ではない。すらすらさらさらーっととにかく、そう、優雅だ。

雄吾の常に余裕を持った振る舞いやそういった印象には、憧れを覚えないでもない。
おこがましいにも程があるってか。


「そういや、ハッキングした中には堂本のそーゆー情報、なかったのか?」


数え切れないほどある雄吾の特技のひとつにハッキングというのがある。
パソコンのデータを盗むことだ。

コンピューターその他に興味も免疫もない俺にはよくわからないが、とりあえず雄吾の手持ちのパソコンには学校の生徒のデータが入っているらしい。


「いや、わかったのは血液型と誕生日程度だ。個人情報が一介の高校生に漏れるようなセキュリティでは、この学園自体が成り立たないだろう」


雄吾は机に向かったまま言った。

……血液型と誕生日って、個人情報だよな。


どうやら、雄吾は一介の高校生ではないらしい。
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