私立秀麗華美学園
「では、満喫すればよろしいじゃないですか」

「そうですよ。クリスマスは明日が本番です。おでかけにでもなれば気分も味わえます」


真理子さんの提案に、みのるの完璧な援護射撃。

これにはゆうかも苦笑いをした。


「なーんなのよ。なんか、遠慮なくなってきちゃって」


この衣装のことにしても。ここまでの裏工作をやられたのは初めてのことだ。


「御本人を目の前に申し上げるのははばかられますが、時期は待ったつもりでございます」


みのるが、言っていた「そろそろ」のことを遠慮がちに述べる。


「ふうん。根拠は一体なんなんでしょう」

「夏休みにいらした時に見せていただいたご様子が、決め手でしょうか。
同じことを1年前には、到底できませんでした」

「へえ。そんな風に見えましたか」

「とはいえ私の一存というわけでも。那美さまから多大なるご賛同を承っておりまして」

「え? 那美さんが? まじで?」

「女性は演技がお上手です」


……さっき会った時は、感心したみたいなコメントしてたのに。全然わからなかった。

すっかり騙されたなと思って、ふと、真理子さんを見ると、思いもかけない表情をしていた。
苦くて固いかたまりを飲み下したみたいな。それは言葉だったのかもしれないし、堆積して押し固まった気持ちだったのかもしれない。

ゆうかが、小さくため息をついてから呟いた。


「まあね、否定はできませんけど。去年やられてたら、ふざけないでって気になってたかも」

「お嬢様のご反応には、ほっとしている次第でございます」


vsみのるのやりとりに一旦決着がついて、ゆうかは大きく背伸びをした。
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