私立秀麗華美学園
「それはもう決定事項なのかな?」

「ええ。相談ということではない言い方だったわ。いつも、そうだけれど」


相手をよく知らないという槙野さんの落ち込み方に疑問を抱かないあたり、進も事情は心得ているようだった。
案外、相談したりもしてたのかもしれない。


「突然のことで、心の整理がつかなくて……昨日連絡を受けてから、相部屋の子と話してみたけれど、当然ながら彼女もフリーだから、一緒に取り乱してしまったぐらいで……」


寮はPAKの適用の有無で分けられている。突然利用することにしたり、利用をやめたりする生徒は、その都度引っ越し作業をしなければならない。振り回すのもいい加減にして欲しいと、不平の声も当然聞いたことがある。


「無理もないよ、辛かったね。……槙野さんは心の整理をする必要があるね。散らばってばらばらになった気持ちを整えて、今考えるべきことを考えなくては」

「ええ、そうね。その通りだわ」

「もしよかったらそんな君に、一人の人材を紹介したいんだけれど、いいかな」


その瞬間、胸に一抹の不安がよぎった。

恐らく、こいつが次に口にする言葉は。


「放課後、薔薇園に来て欲しいんだ」
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