私立秀麗華美学園
「ワンパターンだなあつくづく」

「るせーなてめぇ文句言うならついてくんじゃねぇよ」

「だって気になるだろ。零さんにも会いたいし」


なぜ薔薇園なのか見当がつかないながらもうなずいた槙野さんを連れ、放課後俺たちは教室を出た。

未だに事情は飲み込めないながらも、進が自分の悩みについてどうかしようとしているということはわかっているらしい。


「あの、なんだかよくわからないけれど、ごめんね。巻き込むみたいな形で……」

「いいんだよ槙野さん、ほとんど帰宅部なんだからね月城くんは」

「はいはい暇人ですよおれは」

「……花嶺さんに、怒られちゃうね」


冗談ぽく言って槙野さんはちょっと笑う。
学祭前日、ゆうかがおれをつかんで教室を飛び出したあと、進が一言二言フォローしてくれていたらしいおかげで変な噂にはならずにすんだが、近くにいた槙野さんにはちゃんと見破られていた。


「大丈夫。普段は嫉妬なんてしてくれないから」

「一生に一度の貴重な体験」

「ぼそっといらんこと言うな」


俺と進がぐちぐち言い合いしながら進んで行くのを槙野さんが一歩後ろからついてくる形で、俺たちは零さんがいるはずの奥へと足を進めた。


1月も下旬なだけあって、植物園の彩りは侘しい。土が盛られただけの花壇もいくつか見られる。
ただ雑草の処理がきちんとされていて、営業中の花壇とそうでないものがはっきりわかるように時期のものはまとめて植えられているため、寂れたような印象は受けない。

寒い中毎日働いているんだろうなあ、と思った。最初に会って言われた時にはなんの冗談かと思ったが、零さんは確かに、この広い植物園の主だ。


奥まった薔薇園の近くまできた時、彼はやっぱり何かの球根を植えているらしかった。
俺たちに気付くと、いつものように歓迎してくれる。


「また来たかお前ら、すっかり仲良しだな!」

「師匠、その言い方は納得いきません」

「まあまあ、よかったじゃねえかよー。で、なんでそんな可愛い女の子連れてんだ?」


あまりにも自然な馴れ馴れしい言い方に槙野さんの肩がびくっと震える。

この人、いっつもこの調子で学園中の女子生徒に声かけてるんだろうか。かけてるんだろうな、たぶん。
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