私立秀麗華美学園
そして、約束の日の朝。登校中に、ゆうかの方から突然話を振ってきたので、面喰らった。


「零さんの連れてくる人って、誰なのかしら」

「え? ……ああ、スペシャルゲスト? さあ、今日会えばわかるし、どうせあの人の考えることだしわかんねーかなと思って、考えてなかったなー」

「今日の放課後なのよね?」

「うん。あ、そうだ、だから今日は先帰ってて」

「うん……」

「…………それか、ゆうかも来る?」

「えっ?」


冷静だった横顔が、慌てたようにこちらへ向く。
赤色のマフラーが遅れてなびいた。


「わたしが? なんで?」

「え、いや、気になってそうだったから」


歯切れの悪い感じを勝手にそう解釈したが、違うのだろうか。

身体の正面に両手で握っていたスクールバッグを肩にかけ、ゆうかは口元に手を持っていって考え込んだ。
そのままじーっと見つめていると、「……行こうかな。槙野さんがいいなら」との答えを出したので、槙野さんが登校してくるとすぐに聞いてみた。

槙野さんは小首を傾げて答えた。


「……嫉妬?」

「いや、なんでだよ。ゆうかも零さんとは知り合いだから」

「こっちがなんでたよって話だっつーの朝っぱらからこのクソが」

「はあ?」


自分の椅子に反対向きに座り槙野さんの机に頬杖ついた進が、心の底からだるそうな顔で俺を睨みあげてきていた。


「お前の文句は聞いてねーんだよ」

「馬鹿は死んでもなおらないね」

「あっなんだその懐かしいセリフ腹立つから黙れ」

「あのっ、わたしは構わないよ。むしろ姫の立場にいる人のお話も、伺いたいと思っていたところだし」


火花を散らし始めた俺たちの間に割って入るように槙野さんが慌てて言った。

昨日も父親から連絡があったという彼女は憔悴していて、気を遣わせてしまったことを申し訳なく思った。


「ありがとう。じゃあ放課後、4人で行こう」

「映子さん、君の心の広さには恐れ入るよ彼女の本心に気付いていながらも快く受け入れるなんて」

「だから、嫉妬とかそんなんじゃねーって言って……」


つーかいつのまにか下の名前で呼んでるし……恐れ入るのはお前のフランク加減だよ……


「どうしてそう言えるの?」

「え、」


うっすら笑みを浮かべた槙野さんに問われ、返答に言葉を詰める。


どうしてって、だって、違うだろ………………?




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