私立秀麗華美学園
唖然として立ち尽くす俺たちにひらひらと手を振っているのは、どっからどう見てもやっぱり白上先生だ。

頭に疑問を充満させた俺たちを代表するように、槙野さんが困惑の声を発した。


「えっ、と、白上先生、ですよね……? どうして、先生がこちらに……?」

「こんにちは。こうして個人と顔を合わせるのは、とってもお久しぶりだという気がします」


別に無視しているわけではないのだろう、マイペースがすぎる学園長は問いかけに答える気配をかけらも見せず、にこにこと立ち上がった。


「なんでっつーとまあわけあってなんだが、学園長が俺のばーちゃんだってことは、映子ちゃんは知らねえかもしれねえな」

「ぞ、ぞ、存じませんでした」


ああ、そーいや。白上零さんだったなフルネーム。
前期の学園祭の夕暮れ、ここで出会った時のことを思い出す。わけのわからないホストあがりの不届き者が実は学園長の孫で、次いでわかったのが、秀麗華美学園の正式な読み方。
「しらかみ」に関わる新事実を知ったあの時の俺たちに負けず劣らず、槙野さんは驚いていた。

まあそりゃ、ど金髪で泥塗れの作業着のこの男と、品性のかたまりみたいな老婦人の血が繋がっているなんて、突然言われりゃ絶句するのも無理はない。


「ばーちゃん、学園長を呼んだのは、映子ちゃんとお前らに聞いて欲しい話があったからなんだ。ばーちゃんの、昔の話。
ところで、ゆうかちゃんも来たのか。久しぶりだな! 仲良くやってるか?」

「お久しぶりです、突然ですみません。……まあ、そこそこ半年前よりは……うまく? やってると……」


かなり肯定的な言葉がゆうかから出て来たので思わずじっと見つめると「見るな」と顔を背けられた。
なんとなく追って軽く覗き込むと「見んなっつってんだろ目潰すぞ」と進に頭をはたかれる。痛かったけど甘んじて受けた。零さんが笑っている。


「まあ、聞いて損はねぇからよ。映子ちゃんにとっては助けになればいいんだけどな。
じゃあまあ、あとはばーちゃんに任せるか」


俺たちは緊張しつつ学園長と共にベンチに座り、背筋を伸ばした。
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