私立秀麗華美学園
「もちろん家族の誰にもそれを言ったことはありませでした。
自分たちでも将来を考えたことなどありません。それでも、駄目だと言われると燃え上がる、天邪鬼だったのですね。
親に強制されて結婚などするものか、私はこの人をこんなに愛しているのに、と、そんなことを思うようになりました。
両親とは、しばらくの間口もききたくないと思いました」
笑顔でそんなことをのたまう椿先生だが、彼女が両親に逆らう図など想像できるはずもなく素直に驚く。他の3人も同じようだった。
昔は、はねっかえりの少女だったんだろうか。
まあゆうかも学校ではほとんど完璧に品行方正な生徒やってる割に、淳三郎氏には結構遠慮なかったりするしなあ……
「とっても意外です」
「天邪鬼な上、思い込みが強かったのですね。今でも時々指摘されてしまうのですけれど」
マイペースとも通じる部分があるので、そこは納得する。
「恋人だった彼は中流階級の家庭で生まれ育った平凡な人でした。そこそこに格好良かったことは覚えていますが、実を言うと彼の記憶はあまりありません。
嫁入りの話を一度拒絶してから、わたしは相当思いつめておりました。
そしてなんとも浅はかなことに、あっという間に駆け落ちを決心してしまうのです。
典型的な形で。家族に黙って荷物をまとめ、初夏の早朝に家を出て、家からは少し離れた駅で待ち合わせをしました。
行くあても生きていくあても何もないのに、どうしてあれほど前向きに家を出ることなどできたのか不思議に思います。
反発心からきたエネルギーだとしか思えませんね」
椿先生の生家といったら、えらい不動産持ちの家系で、当時でいえばまさに経済界を指一本で動揺させられるレベルのところだったような……。
財閥解体がおこなわれた当時にあっては、地域じゃ知らない人もいないような家だっただろう。そんなとこの娘によく手出したななんて思うのは、頭の固い証拠だろうか。
自分たちでも将来を考えたことなどありません。それでも、駄目だと言われると燃え上がる、天邪鬼だったのですね。
親に強制されて結婚などするものか、私はこの人をこんなに愛しているのに、と、そんなことを思うようになりました。
両親とは、しばらくの間口もききたくないと思いました」
笑顔でそんなことをのたまう椿先生だが、彼女が両親に逆らう図など想像できるはずもなく素直に驚く。他の3人も同じようだった。
昔は、はねっかえりの少女だったんだろうか。
まあゆうかも学校ではほとんど完璧に品行方正な生徒やってる割に、淳三郎氏には結構遠慮なかったりするしなあ……
「とっても意外です」
「天邪鬼な上、思い込みが強かったのですね。今でも時々指摘されてしまうのですけれど」
マイペースとも通じる部分があるので、そこは納得する。
「恋人だった彼は中流階級の家庭で生まれ育った平凡な人でした。そこそこに格好良かったことは覚えていますが、実を言うと彼の記憶はあまりありません。
嫁入りの話を一度拒絶してから、わたしは相当思いつめておりました。
そしてなんとも浅はかなことに、あっという間に駆け落ちを決心してしまうのです。
典型的な形で。家族に黙って荷物をまとめ、初夏の早朝に家を出て、家からは少し離れた駅で待ち合わせをしました。
行くあても生きていくあても何もないのに、どうしてあれほど前向きに家を出ることなどできたのか不思議に思います。
反発心からきたエネルギーだとしか思えませんね」
椿先生の生家といったら、えらい不動産持ちの家系で、当時でいえばまさに経済界を指一本で動揺させられるレベルのところだったような……。
財閥解体がおこなわれた当時にあっては、地域じゃ知らない人もいないような家だっただろう。そんなとこの娘によく手出したななんて思うのは、頭の固い証拠だろうか。