私立秀麗華美学園
「おはよう和人、大ニュース!」


翌日、待ち合わせ場所へきっかり7時55分にゆうかは来て、珍しく大声を上げた。
俺はきちんと学習して、50分から待っていたのだ。


「大ニュース?」

「ええ。今回の依頼、簡単に片付きそうよ」


ゆうかはやや上目遣いでうっすらと微笑みを浮かべた。
出た、小悪魔。
よからぬことを企んでいる印だ。


「驚くわよ。三松さん、あの子ね、例のプロジェクトに関わってる、つまり堂本と同じ境遇の可能性が高いわ」

「えええ!?」

「分野で言うと音楽ね。あの子転校生だったし、ちょっと調べたらすぐに見当がついたわ。本人の前でもそれをちらつかせたら、わかりやすい反応してたわよ」

「うへえ……」


昨日までは知ってもいなかった存在が、一挙に2人も発覚するなんて。


「だから、突きつけてみたらどうかしら。案外2人にとってもいい結果になるかもしれないわよ。同じ境遇のひと同士なら、わかりあえるものだと思うから」


昨日のあの時も、ゆうかはあのプロジェクトとやらに物凄い反発を見せていた。
そんなに堂本のことを考えていたのか……と、思いかけたのだが。


「それに堂本、私たちに恐れをなしてるからまさか断りはしないとも思うしね」


……口にはしませんが、堂本が恐れている対象はおおよそあなたなんじゃないかと。


「つきあってみないとわからないことも結構あるものねー」


なんて無責任で飄々とした態度。
しかしそれもゆうかだというだけで、当然の態度のように思えてくるから不思議だ。

ゆうかの人道的なOKラインは、未だによくわからない。


「だから、私と咲ですませられると思うわ。中間近いし、和人は勉強頑張ってよ」


はあ……。
俺ほんと情けな……。
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