私立秀麗華美学園
「年ですから、なかなか全ての生徒の顔と名前を一致させるのは難しいのですが、最低限、制度を適用している生徒のことは覚えるようにしています。
月城くんに花嶺さん。あなた方が、強制されていることはありますか?」


いきなりのことで面食らった俺に対し、横でゆうかが落ち着いて答えた。ちょうどそのことを考えていたかのように。


「食事は一緒にすることもありますが、自由意思によります。学校ではただのクラスメイトと同じで席も離れます。寮へ帰ってからは連絡を取らない限り共用スペース以外での接触はありません。休日も同じです」


淀みなく返すゆうかにおれたちはそろって目をみはる。


「で、でも、暗黙の了解というか、無言の強制みたいなものはおありでしょう?」

「そりゃあ、どうして和人と登下校するようになったかと言ったら、この関係下にあったからよね。でもそれって制度とは関係ないの。この制度が始まったのは私たちが中等部に上がった時だったけれど、むしろそれより前の方が強制されていたことは多かったと思うわ」

「それを聞けて、とても安心しています」


先生は満足げに微笑み、再び槙野さんと身体ごと向き合う形をとる。


「実は、この制度の適用には様々な条件があります。それは本人たちではなく、親たちを拘束するものです。その中で最も大切なのが、『最終的に婚約は本人たちの意思に委ねること』。
もちろん全ての親御さんに条件を遵守していただけているかどうかは不透明で、現在の課題なのですけれど。

つまり、この制度はあなた方、自由に恋愛の相手を選ぶことが難しい子供たちのため、最大6年間の猶予を与えるものなのです」
< 423 / 603 >

この作品をシェア

pagetop