私立秀麗華美学園
最大6年間の猶予。
当たり前にと言っていいのか、そんな風に考えたことは一度もなかった。政略結婚の第一段階。汚いやり取り。悪いものだと決めつけてかかっていた。
親の干渉なんてものは少ないほど良い。それは俺たちにとっては、皮肉な偏見だったかもしれない。
俺たちの生まれた環境は俺たち子供が好き放題してちゃ維持できない。そんなことはわかっていた。別に俺たちじゃなくたって同じだと思う。我慢のポイントが違うだけで。
だから、むやみに制限を突破しようとするのではなくて、やれる限りで一番良い方法を取る。
そういう意味で椿先生のやり方は、とても理にかなっていると言えた。
「何のための猶予かと言えば、ひとつには、相手のことを見極める、もしくは受け入れるための猶予期間ですね。
強制であれ偶然であれ傍にいる人を特別に思うのは至って自然なことです。意識的に好こうとすることも時には必要だと思いますが、どちらにせよ普通はそれに期間を要します。
そしてもうひとつ。見極めた結果が凶と出た場合のお話です。
述べた通り、私は生徒たちが親に生き方を決められることをよしとしてはおりません。
むしろ、過激な言い方をすれば、あなた方はもっと親に反抗するべきなのです。
嫌なら嫌だと。我儘を言うのではなく、なぜそう思うのか、善処はしてみたか、拒否した場合に起こる不利益をどのようにすれば埋め合わせることができるか。
あなたたちにならできるはずです。それさえできなければ、どちらにせよこの先この世界を生きていくことなどできません。
泣き寝入りは許しませんよ」
長い長い、語りの終わりを告げるように、椿先生はぴしりと張っていた背筋のラインを崩し、頬杖をついた。
当たり前にと言っていいのか、そんな風に考えたことは一度もなかった。政略結婚の第一段階。汚いやり取り。悪いものだと決めつけてかかっていた。
親の干渉なんてものは少ないほど良い。それは俺たちにとっては、皮肉な偏見だったかもしれない。
俺たちの生まれた環境は俺たち子供が好き放題してちゃ維持できない。そんなことはわかっていた。別に俺たちじゃなくたって同じだと思う。我慢のポイントが違うだけで。
だから、むやみに制限を突破しようとするのではなくて、やれる限りで一番良い方法を取る。
そういう意味で椿先生のやり方は、とても理にかなっていると言えた。
「何のための猶予かと言えば、ひとつには、相手のことを見極める、もしくは受け入れるための猶予期間ですね。
強制であれ偶然であれ傍にいる人を特別に思うのは至って自然なことです。意識的に好こうとすることも時には必要だと思いますが、どちらにせよ普通はそれに期間を要します。
そしてもうひとつ。見極めた結果が凶と出た場合のお話です。
述べた通り、私は生徒たちが親に生き方を決められることをよしとしてはおりません。
むしろ、過激な言い方をすれば、あなた方はもっと親に反抗するべきなのです。
嫌なら嫌だと。我儘を言うのではなく、なぜそう思うのか、善処はしてみたか、拒否した場合に起こる不利益をどのようにすれば埋め合わせることができるか。
あなたたちにならできるはずです。それさえできなければ、どちらにせよこの先この世界を生きていくことなどできません。
泣き寝入りは許しませんよ」
長い長い、語りの終わりを告げるように、椿先生はぴしりと張っていた背筋のラインを崩し、頬杖をついた。