私立秀麗華美学園
「シンデレラも泣き寝入りしていたら、灰かぶり娘のままだったでしょうね」


舞っていた枯れ葉がテーブルの上に着地した時、ゆうかがしばしの沈黙を破った。


「シンデレラ?」

「突然思い出して。クリスマスパーティーでの椿先生のお話」


進が詳しい話を求める。そういえばこいつは途中参加だったな。父親と兄貴と一緒に派手に入場してきた時のことを、薄ぼんやりと思い出す。

椿先生なりの「シンデレラの教訓」をゆうかがかいつまんで説明していると、零さんが戻って来た。



「わりーわりー、びっくりしたろ?」

「そりゃもうしましたよ」

「でもさすが師匠です。ありがとうございました」

「彼女にとってはもちろん、わたしたちにとっても決して無関係な話ではありませんでした。貴重なお話が聞けて、よかったです。突然押しかけて失礼しました」


やけに改まった、しかし目線は下げたままのゆうかに、少しだけ胸がざわついた。


「いーや、ゆうかちゃんなら大歓迎だよ。本当に。
あー、ところでだ、俺からも話さなきゃならねえことがあったんだよな。和人、よりにもよってお前にあの列車内で気づかれるとは思わなかったよ」


ざわつきの正体を確かめる間もなく、零さんが新しい話を持ち出す。ゆうかが視線を上げて、俺の顔を見た。


「列車って、この間の?」

「ああ。兄ちゃんたちの披露宴行った帰りなんだけど」

「……じゃ、俺は部外者だな」


進が上着のポケットに手を入れて立ち上がった。


「別にお前になら、聞かれたくないって話でもないんだが」

「遠慮しますよ。邪魔者っぽいし、あと、槙野さんのことも気になりますから」


慇懃に礼をして進が去って行き、進の座っていたところに零さんが腰を下ろした。
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