私立秀麗華美学園
「結論から言うと、俺はお前たちと同じ列車に乗っていた」
「別にちょっと気になっただけで、どこに行ってたのかなんて問いただすつもりはないんですけど……」
単なる問いかけが、重たい空気をまとった返答として返ってくることに違和感を覚えたが、零さんは至って真面目な顔つきをしていた。
「そして出かけ先も、お前らと同じだった」
「同じって、なんで知って……」
「お前の兄貴、月城和哉と古堀那美の小規模な結婚披露パーティーな」
俺たちの出かけ先を知っていただけではなく、那美さんのフルネームまでをこともなげに発する零さん。驚いたなんてものじゃなかった。
「もちろんちゃんと招待客だぞ」
「うちの誰かと、面識があったんですか?」
「『うちの誰か』は違うかな。俺を招待してくれたのは、那美だから」
一言でその関係性がわかってしまう呼び方だった。那美。
隣ではゆうかも同じようにぽかんとしていた。
「話せば長くなるけどな。那美とは同級生だったんだ。3年間だけだったが偶然ずっと同じクラスだった。もちろんこの学園の中等部だ」
そういえば那美さんは、中等部からここへ入学したが、家庭の事情で高等部へは進学できなかったと聞いたことがある。
兄ちゃんの婚約者として那美さんの存在を知ったのは、俺が初等部の、何年生の時だったか――
「お前は覚えてないかもな。6年前だ。那美は家の経済的な事情でここの高等部には進学できず、別の私立高校に進学した。その年の5月とかだったかな、那美とはずっと連絡を取ってたんだが、婚約者ができたって、知らされた」
落ち着いたトーンで語る零さん。話がそこまで来て、俺はちょっといたたまれない気持ちになっていた。
婚約当初のあの二人の関係は、当時の記憶としても少し残っているし、姉ちゃんに詳しく聞かされたことがある。
那美さんと深い関係にあった人にとって、気分の良い話にはとてもなりそうもないことは、わかっている。
「別にちょっと気になっただけで、どこに行ってたのかなんて問いただすつもりはないんですけど……」
単なる問いかけが、重たい空気をまとった返答として返ってくることに違和感を覚えたが、零さんは至って真面目な顔つきをしていた。
「そして出かけ先も、お前らと同じだった」
「同じって、なんで知って……」
「お前の兄貴、月城和哉と古堀那美の小規模な結婚披露パーティーな」
俺たちの出かけ先を知っていただけではなく、那美さんのフルネームまでをこともなげに発する零さん。驚いたなんてものじゃなかった。
「もちろんちゃんと招待客だぞ」
「うちの誰かと、面識があったんですか?」
「『うちの誰か』は違うかな。俺を招待してくれたのは、那美だから」
一言でその関係性がわかってしまう呼び方だった。那美。
隣ではゆうかも同じようにぽかんとしていた。
「話せば長くなるけどな。那美とは同級生だったんだ。3年間だけだったが偶然ずっと同じクラスだった。もちろんこの学園の中等部だ」
そういえば那美さんは、中等部からここへ入学したが、家庭の事情で高等部へは進学できなかったと聞いたことがある。
兄ちゃんの婚約者として那美さんの存在を知ったのは、俺が初等部の、何年生の時だったか――
「お前は覚えてないかもな。6年前だ。那美は家の経済的な事情でここの高等部には進学できず、別の私立高校に進学した。その年の5月とかだったかな、那美とはずっと連絡を取ってたんだが、婚約者ができたって、知らされた」
落ち着いたトーンで語る零さん。話がそこまで来て、俺はちょっといたたまれない気持ちになっていた。
婚約当初のあの二人の関係は、当時の記憶としても少し残っているし、姉ちゃんに詳しく聞かされたことがある。
那美さんと深い関係にあった人にとって、気分の良い話にはとてもなりそうもないことは、わかっている。