私立秀麗華美学園
「中間試験まで残り2週間をきりましたね。そろそろお勉強の方、お願いしますよ」


教卓で例のおばん先生が言って、ホームルームが終わった。

ため息その他でざわつく教室。
とはいえ高貴な生徒方、俺のように情けない例は稀有なわけで、日頃の努力の見せ所ってわけだ。


でもな、2週間って長いんだからな。
2週間あれば……蝉は一生を終えるし、ビデオの返却期限は過ぎるし……あと、えと……髪は伸びるし……。

とにかく、うん、長いだろう。

というわけで、俺が勉強を始めるのは早くて五日前。120時間ありゃ十分。
お前は睡眠もしないのかという突っ込みはなしでよろしく。


「和人。わからないところあれば教えるから、今回はせめて80位以内目指しなさいよ」


ゆうかは口早に言った。


中学の頃はゆうかのスパルタもそれほど嫌ではなかったのだが、最近になって急に情けなくなって、近頃俺の先生役は雄吾が務めてくれていた。

つまり俺にはやっと羞恥心が芽生え始めたわけだ。


「よお月城、勉強どうだ?」


出たー。
顔見たくねーやつナンバーワンくんが、目の前に現れた。

俺は机にひじをついてなんとも呆けた顔をしていた。
いかんいかん、凛々しくしなければ。
俺は多少、無駄な努力で顔の筋肉を駆使し出した。

そしてきもいきもい笑顔でいっぱいの笠井くんを睨み上げた。


「俺に勉強すべき分野なんてねえよ」


俺が口だけなのは周知の事実だ。

笠井は口の端を歪めた。
こいつの癖だ。人を見下した時こいつはいつも、口の端どころか顔を歪める。


「大した自信だな。んじゃあ、勝負するか、俺と」


笠井は口の両端を歪めた。
見下し度フルパワーだ。
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