私立秀麗華美学園
2月に入って1週間が過ぎた頃。
一緒に登校していて、A組の教室の前まで来た時だった。放課後はまた仕事があるから、という話に続いて、またその単語は何の前触れもなく現れた。
「あ、そうだ前言ったデートのことだけど」
不意を突かれて返事ができない。俺が目をかっ開いてることに気付いていないはずもないが、ゆうかはこともなげに続ける。
「14日でいい? ちょうどバレンタインだし」
「……はい」
「ん。じゃあ予約しとく」
颯爽と教室に入っていくゆうかから一歩遅れて、教室に入り席に着く。心臓ばっくばくだったところに隣から「おはよう」と声を掛けられて椅子ごと飛び上がりそうな気分だった。
「おは、おはよう……」
「えっ、なんかごめん……? 驚かせた……?」
「いや、いやいや。なんでもないっす」
ふうん、とゆうかの方に目をやる槙野さん。
彼女は薔薇園での講演会(?)の直後、両親に電話をかけ、自分の素直な気持ちを伝えた。
ご両親はとても驚いていたそうだ。かといって、じゃあこの話はなかったことに、と、そんな簡単にはいかない。
ただ、本人たちを含めて先方ともう一度話し合う機会を作るよう、努力することを約束してくれたそうだ。
やっぱりそのまま話を進めるということにならないとも限らないが、その場合にも槙野さんは適切な心構えをもって猶予期間に臨むことができるだろう。
一緒に登校していて、A組の教室の前まで来た時だった。放課後はまた仕事があるから、という話に続いて、またその単語は何の前触れもなく現れた。
「あ、そうだ前言ったデートのことだけど」
不意を突かれて返事ができない。俺が目をかっ開いてることに気付いていないはずもないが、ゆうかはこともなげに続ける。
「14日でいい? ちょうどバレンタインだし」
「……はい」
「ん。じゃあ予約しとく」
颯爽と教室に入っていくゆうかから一歩遅れて、教室に入り席に着く。心臓ばっくばくだったところに隣から「おはよう」と声を掛けられて椅子ごと飛び上がりそうな気分だった。
「おは、おはよう……」
「えっ、なんかごめん……? 驚かせた……?」
「いや、いやいや。なんでもないっす」
ふうん、とゆうかの方に目をやる槙野さん。
彼女は薔薇園での講演会(?)の直後、両親に電話をかけ、自分の素直な気持ちを伝えた。
ご両親はとても驚いていたそうだ。かといって、じゃあこの話はなかったことに、と、そんな簡単にはいかない。
ただ、本人たちを含めて先方ともう一度話し合う機会を作るよう、努力することを約束してくれたそうだ。
やっぱりそのまま話を進めるということにならないとも限らないが、その場合にも槙野さんは適切な心構えをもって猶予期間に臨むことができるだろう。