私立秀麗華美学園
「わかんねえ……」


大口叩いていた俺は、とっくに海の彼方へ捨てて来た。

今日の全授業を真剣に聞き、いかにこの学校のレベルが尋常でないかを思い知り、寮で雄吾に特別講習を開いてもらっているというわけだ。


「お前の場合、何がわからないのかがわからないということが問題だ」

「全体的に、どこから手をつければよいのやら」

「それでは教えようがない」


雄吾がため息をつき、物凄く申し訳ない気になった。

とりあえず雄吾が持っていた数学のドリルを開いてみている。
わかったことは、今度から得意科目というのを数学以外にしなければいけないことぐらいだ。


とにかく問題数をこなせと(もちろんゆうかから)の指令なので、解きまくるつもりではいるが、解き方がわからないので1時間経った現在、3問目に手がつけられないでいる。


「にしても、急だな。ゆうか絡みか」

「おー」

「悩み多き男だな」

「仕事の方は?」

「まあ、順調と言っていいだろう」


もちろんそれほど気にはしていない。
体面上定期的に聞いておこうと思っただけで。


「例のプロジェクトのな。やはり、情報のガードが異常で……」

「ああ、そうっすか」


ハッキングもハイキングも今の俺にはどうでもいい。
俺は今、この証明の問題(1年5月に学習済みらしい)に全力を注いでいる。


「特別な生徒同士、か。気になるな……両想いが成立次第、もう少し問いただすとするか」


雄吾が重々しくついたため息から、暗黒のオーラが漂って来る気がする。





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