私立秀麗華美学園
半ば放心しながらりえさんの話を伝えると、雄吾も「そうか……」と押し黙った。
へたり込んで、ベッドを背にもたれかかる。机の上には白い箱が相変わらずで鎮座している。


「病状については良かったじゃないか。付き添い体制も整えられるようだし。
とんで行きたい気持ちはわかるが……そうだな、前向きに捉えてみてはどうだ。ゆうかに頼りっきりの精神を立て直すには、タイミング的にもちょうどいいんじゃないか? 」

「うん……それは、そうかもしれない」


ゆうかにいろんな言葉をもらった今。歩み寄ってくれていることがわかった今。
馬鹿みたいに依存するのを改める機会と言ってもおかしくない。


「隣に立つことを恥じない人間になるんだろ」


駄目押しのような一言に、冗談めいた雰囲気はなかった。

どちらにしたって会えないのなら、ぐずぐず過ごすより、意味のある期間にするべきだ。
ゆうかがいないからこそ。微塵も持っていない自信というものをつける努力を。
ゆうかの隣に立てる人間になれるよう、努力を。


意気消沈から一転、そんな堅苦しいぐらいの気勢を負って、登校した次の月曜日。


「だからっててめぇ病室の場所ぐらい聞いとけよ!」

「だって会わない方がいいみたいだし。聞いたところでお前に教える義理ねーし」

「いや、行きゃぁしなくても見舞い送るとかできることあんだろ、ぼけなすくそったれ」

「…………その発想はなかった」


恒例と化した進との、情報提供及び激励及び罵詈雑言の応酬に、槙野さんはもはやなんのつっこみも入れなくなってきていた。
周りの他の生徒も、初めこそ驚いていたものの慣れてきたのだろう。女子への表面紳士は継続中だが、今や誰もそれを素顔だと信じてはいない。

俺たちのやりとりが終わったのを見てとると、槙野さんが待っていたように口を開いた。


「ね、今日ってさ、転校生が来る日よね」

「ああ、そういえばそうだね」

「え? 転校生? こんな時期に?」


初耳だった俺は見舞いの品について考えるのをやめ、身を乗り出した。
< 470 / 603 >

この作品をシェア

pagetop