私立秀麗華美学園
「あら? 和人、勉強は?」


先に雄吾と食堂で夕食をとっていた俺に、寮の階段から咲と共に降りて来たゆうかが言った。


「ちゃんとしてたって」

「5問、な」

「5問って……学校終わったの、何時よ」

「まあ、いろいろと事情が……」


事情というのは簡単だ。

俺が馬鹿で理解力もなくわからない箇所さえわからないというどうしようもない人間であるがゆえにおよそ2時間で5問つまりゆうかや雄吾なら5分で解ける問題1題を24分かかって解いたということだ。


深いため息が聞こえた。
情けないことに、近頃ひとにため息をつかせることが特技となってしまっている。


「本気で頑張るんでしょ?」

「はあ……咲も、勉強してんのか?」

「あたりまえやん。和人と一緒にせんとってくれるー」


咲はべーっと舌を見せた。
な、なんて憎たらしい……。


「やる気の源はわからないが、本気でやるそうだ。ゆうかも見放さないでやってくれ」

「ほんと? 1教科ぐらい、満点取って見せてよね」

「それより依頼は?」

「話変えてんじゃないわよ。誓いなさい」


恐ろしい恐ろしい……。

俺は蛇に睨まれた蛙と化してしまうのだった。
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