私立秀麗華美学園
「ごめんね、見つけて飛びついちゃった。和人くんも濡れちゃったね」
「……なんかあったの?」
「うーん……しめられた?」
よく見ると幸ちゃんは、髪が乱れていて、コートもマフラーもしていなかった。制服のブレザーは濡れて色が変わっていて、かばんも持っていない。
「しめられた?」
「あれ? そういう言い方するよね? ……えーっと、なんだっけ。藤家さん? とかに、なんていうの、呼び出されて、因縁つけられちゃった。あんなの嫉妬じゃんねー」
百合子さんたちだ。まさか、そこまでするなんて。
「はじめは3人だったけど、めんどくさくなって帰ろうとしたら、なんか増えてさー。怖くなって、逃げてきちゃった。いろいろ置いて」
「……ごめん、俺が、言っとかなかったから……百合子さんたちがよく思ってないこと、知ってたのに」
「和人くんは悪くないでしょー。ゆきだって反感買ってるのわかってないほど馬鹿じゃないもん。ってゆーか、何もされてないしさ」
ぽつぽつと、小雨だが確かな重みを持って降り続けている滴が、ひとつの傘に入った俺たちを濡らしていく。
コートは既に濡れて重くなっていたので、とりあえずマフラーを幸ちゃんの首に巻きつけた。
「わっ」
「風邪引いちゃうし、早く帰ろう。荷物は後で取りに行くから」
「……イヤ」
「え?」
「ていうか、無理。ゆきの相部屋の子、藤家さんのいとこだもん」
「でもこのままじゃ……誰か他のところに」
「ゆき、女の子の友達なんていない」
だからって男の友達のとこへ行かせられるはずもなく。
戸惑う俺を見上げた幸ちゃんは眉をひそめて、そっと唇を動かす。
「和人くんの部屋に、入れて」
「……なんかあったの?」
「うーん……しめられた?」
よく見ると幸ちゃんは、髪が乱れていて、コートもマフラーもしていなかった。制服のブレザーは濡れて色が変わっていて、かばんも持っていない。
「しめられた?」
「あれ? そういう言い方するよね? ……えーっと、なんだっけ。藤家さん? とかに、なんていうの、呼び出されて、因縁つけられちゃった。あんなの嫉妬じゃんねー」
百合子さんたちだ。まさか、そこまでするなんて。
「はじめは3人だったけど、めんどくさくなって帰ろうとしたら、なんか増えてさー。怖くなって、逃げてきちゃった。いろいろ置いて」
「……ごめん、俺が、言っとかなかったから……百合子さんたちがよく思ってないこと、知ってたのに」
「和人くんは悪くないでしょー。ゆきだって反感買ってるのわかってないほど馬鹿じゃないもん。ってゆーか、何もされてないしさ」
ぽつぽつと、小雨だが確かな重みを持って降り続けている滴が、ひとつの傘に入った俺たちを濡らしていく。
コートは既に濡れて重くなっていたので、とりあえずマフラーを幸ちゃんの首に巻きつけた。
「わっ」
「風邪引いちゃうし、早く帰ろう。荷物は後で取りに行くから」
「……イヤ」
「え?」
「ていうか、無理。ゆきの相部屋の子、藤家さんのいとこだもん」
「でもこのままじゃ……誰か他のところに」
「ゆき、女の子の友達なんていない」
だからって男の友達のとこへ行かせられるはずもなく。
戸惑う俺を見上げた幸ちゃんは眉をひそめて、そっと唇を動かす。
「和人くんの部屋に、入れて」